第82章 光芒(こうぼう)
その言葉に…
変わった方、とても誠実な方、優しくて…愛おしい方
この方と結ばれる方は、幸せ者だろう、どんなにか果報者だろうか、と…
憧れる反面、父上が決して許さないだろうなといった想いが溢れていた
どっくん
どっくん!
「……//」きゅっ
自らの手を、胸の前で結んだ
上がる心音が、訴えていた…
どうせ誰かに娶られるのならば――この人がいい、と
すっ
正能「必ず守る――
そう、自分に誓ったのだ
助けてくれた恩に、応えたいから」
と
真剣な表情で、笑みを僅かに携えて、左手を格子の中に入れて、差し伸ばしてくれた
だが…壊れ物のように…穢してはならない、とでも言うかのように……
ぴたっ
こちらの頬に触れようとする動きが、寸前で止まった
当時――
互いの名も、身も、知らなかった
だが…互いに、噂で聞いていた
出会ってから、正能は修練場で大体の位置と共に大きな屋敷の家について聞き
「ああ、知ってる知ってる
確か名字は野山(のやま)と言って」
正能「野山…」
「そう
で、代々馬を産出してる家で、武家としての位もガンガン上げていったとか」
正能「そんなに…立派な、武家(の出)なのか」愕然
「ああ、そう!
俺達下っ端からしたら天上の存在だよ!」
正能「そう…なのか…」
「なんだ?お前が人に興味を持つなんて珍しいな」
正能「そうか?」
「そうそう!
知り合いか?なら紹介して
正能「いや、気になっただけだ!」
「?そうか
ならいいや
次、右でやろうぜ!」
正能「ああ!よろしく頼む」頭を下げる
「ははっ、お前変な所律儀だよな^^」
正能「?そうか?」
「ああ…癒やされるぜ」
正能「??」眉を顰める
「こっちの話だ
行くぞ!」微笑←木刀構え
正能「ああ!」微笑←木刀構え
かあんっ!!
木刀を交えながら…
俺では…とても釣り合わない
何より…幸せには、できない
困窮に、苦労に付き合わせてしまう
父上、母上と続いて亡くなったばかりで出費も激しく…
使用人も、帰る家の無い乳母を除いて全て出払わせたばかり
ただでさえ苦しいと言うのに…
首も取れない俺の元では、これから更に苦しくなるのは明白
とても…幸せに等…‥
ならばせめて――守りたい
出来ることをしたい
出来ることで、返したい
そう、思っていた