第80章 願い
桜「関係性…って?」
涙「あなたの元に、あなたの写し身の魂が戻らなくなる
羽の形をして、中に戻ることは…」
『!!』
涙「そうでなくては…人とは呼べない
元来、人というものはそうではない
体が解け、消えて行くものでもない
残された魂が、基にされた人の元に戻るものでもない
人とするということは…そういうことよ
だから…共に存在出来るように、理を歪めた
禁忌と呼ばれる対価を…その身一つで背負おうとした
けれど…あなた達に降り掛かる対価を減らすそれが無ければ、一つの命を対価にしないとならないものだった…
支払い切れなかった、たった一部であっても」
小狼「それ程に…重要な…‥」
涙「ええ…
その為に…コツコツと準備を続けていたんでしょうね
誰にも言わずに…頼らずに……その時間と労力をも、対価として」
黒鋼「だが…足りなかったんだろう
問題は…後になってから気付いたってことか」
涙「ええ
恐らく…同じ魂が共に存在すること自体、出来てはいる」
モコナ「え!!」
涙「第一に…今、小狼達とケイトが邂逅できているのがその証拠
更に…私の魂の分体がケイトの魂の中にいる
別々の肉体を持つことは出来なくとも…
別個の魂だから…という理由でね」
黒鋼「それを応用できると踏んだって訳か」
ファイ「考えたね~^^」
涙「ですが浅い
別個の魂として存在できたとして、同じ肉体の内のみ
もし仮に異なる肉体にそれぞれが宿って邂逅した場合…
異なる肉体で長い間、同じ世界、同じ空間、同じ時間に共に居れば、ひずみと歪みを与える存在となってしまう
理に相反するものだから、否応なく…本人達の意思等関係なく…
想定していなかったのはこの一点だけ
ずっと永続的に共に居れるよう願った、その対価が魂一人分足りなかった
本来関係性を対価にしないといけない分を、二人分は無理だった
それだけのことなのです」
黒鋼「……そうか…想定してなかったか」
モコナ「でもでも!
写し身のシャオランとサクラは小狼の両親だよ?!
何で関係性を対価にしないといけないの?ずっと一緒に居れたんじゃないの?」
ファイ「それごと込みでの写し身という存在なんだよ
写し身としての魂の内ならば、まだ何とかなった
辛うじて繋ぎ止められた
でも…同じ人としての魂同士なら、話は違ってくる」真剣