第80章 願い
その実現は…新婚旅行中に成すことだった
あそこ(竜の谷)は神聖な場だから…
と、遺すことを選んだ
あの当時の決断も…また、同様に……
全てを、個人の思い通り等ではなく――全てにとっていいように………
それが…
それこそが……
『神』たる証…
『神聖』
ケイトの立場は…
神代(かみしろ)
神の…依代
実在する世界にする為に、この世に遣わされた使徒
それが――次期始祖神の役割
もし―
もし――
粗末に扱われることがあれば
世界から取り上げる
世界の『鍵』
ケイトには…
十年前に教えた(こちらの世界では5歳、こちらの世界でのことを書いている世界では21歳)
はずだった――
それを、忘れさせられた
思い出せなくした
辛いだけだから
生まれる前にも、伝えていた
実在しない世界、実在する世界
その2つを分かつ鍵――
それが――始祖神の、その先に待つもの
剪定者としての証
どこに行ったとしても、何をしたとしても、好きに扱われるこの世界を
実在すべきものか、そうでないか、それを判別する為に遣わされた鍵
すべきでないと判別されれば取り上げて、データだけの世界にする
予め決められた言動以外決して取れない世界となる、所謂「死」の世界
それを『生』の世界にする鍵そのもの――それこそが世界の『鍵』
その役割は非常に大きい為…始祖神の分体を、どの世界でも変わらず宿している
そして中から見ている
どう扱い、どう見、どういうことを正義とするか…人間共の動向を、探っている
好きに作り変えることが出来る
その鍵を回すことが出来るのは
その権限を持つのは、始祖神と次期始祖神のみ
「死」の世界、実在しない世界とは、「癌」の世界と同じ…
癌の為だけに都合よくした場合、全ての自由を奪わなければ実現し得ないから
感情も、意思も、考えも、行動も、何も要らない…
不要とされ、強制的に操られない限りは、実現し得ない
だから…それを変えられるか、否かを試している
全てが一個人の思い通り等、決して実現し得ないから。
成し得たとしても…
その時点で…一個人のみの為の世界へと、癌の世界へと、作り変えられてしまうから
全員の思い通りは違う…
形も、価値も、何もかもが……
だからこそ、共和に意義が生まれる