第76章 冒険者依頼（クエスト）、来訪

癌に纏わりつく、無数の怨霊の怨嗟の声…

本人に等、言える訳がない
優しいからこそ、最小限のみに済ませてしまう…

生きてさえいれば…きっと、学びを得る機会は来るはずだと…学ぼうとしてくれるはずだと、信じて……


だが…それらの厚意は容易く、裏切られ、踏みにじられ、食い物にされ、弄ばれて殺される！



アマゾネス狩りの被害者の厚意
故に癌は知らされなかった
その気持ちを、決意を、自分一人の勝手で、無下には出来ない

でも死んだ被害者達は怨む、憎む
信じて託した側である癌が、何も知ろうとせず、笑って無関心を貫き、日々を過ごし、また再び繰り返し、同じく人生と命を弄ばれて死んでいく人が出て行く

あまつさえ、ファミリアを連れて直々に命懸けで癌を助けに来たフレイヤに主犯を着せ、
闇討ちを最近受けながら、春姫が改宗出来たことを通して恩恵が無くなったと理解しながら、
アイシャが入ろうとしてきた時も、なおも、護衛に走ろうともせず、笑って日々を過ごす

一度も、喪っていない立場のままで――


自分達「だけ」無事なまま――安全圏で



その点、ケイトはというと…

比較するまでもなく、
きちんと今後において、その遺族に渡るまで情勢を把握しており…

守れなかった立場として、出来ることを徹底的にしていた。

自分がしたい理想を貫くことで生じる「周囲に拡がる迷惑、命や人生に関わる次元の余波」
それを軽視することなんて、決してしない――

喪った立場を知るからこそ―――奪われた立場を知るからこそ――それを決して、与えたりなんかはしない


自分だけ安全圏なんて、無事なんて、死んでも出来ない――

死に物狂いで駆け付けて守り抜くだろう――
あの、ヘレイオス街の時と同じように――



たとえ――自らが守る人々から殺され掛け、何をされようとも…

決して、攻撃の手も、防御の手も、一切合切を向けないぐらいに―――


死に掛けてもなお、瀕してもなお、気遣いをやめずにいた



その点、癌は…

自分が始めたことなのに、最後まで責任を取ろうとせず、知ろうとも無かった

全く関心が無いのだろう
知った後もなお、仕方ないと割り切れるぐらいには…

そんなつもりは無かったと醜く何度も何度も訴えて、何もしない行為を取り続けて平気で居られるぐらいには……


ケイトには無理だ――出来ない