第74章 融和
リュー「………彼が…
自身の持つ善性を、助けた人達を、盾にしてしまっているから…
とでも言いたいんですか?」
シル「……」
リュー「…でも…」
騒がしい酒場内で、その端で…会話をする中
シルは一度、客達の方を向いてから、振り返りながら、私へ笑い掛けた…
シル「……‥本当に、優しい人はね…
なんの罪もない無関係な人へ、被るべきでない人達へ、ちゃんと見極めて接することが出来るのよ?
何度も何度も考えて、
何度も何度も挫折して、
それでも挫けず前へ、
立ち上がって、奮い立たせて、
同じ想いを、痛みを味合わせるものかと奮起する」微笑←天井を見つめる
リュー「!
…それは……
――ケイトさん?」
シル「…ええ…
英雄って…そんな、簡単なものでいいんじゃないかしら?^^
ちゃんと背負って、向き合って、悩んで、考えて、そんな…
そんな単純なこと。
したことを投げ出さないで、されたことも背負って、必死に頑張れる…
そんな一途な、一生懸命な人……
誰かを助けるだけではダメ…
その迷惑の矛先を、考えなくてはダメ…
それが、一番大事なんじゃない?リュー^^」
リュー「……」ぽかーん
有り触れた…一つの答え……
それに、ふっと笑みが零れた
断罪ではなく、罪への言及でもなく…
背負わないこと
その重大さを訴えかけているようにも見えた
私は――少しでも背負えているのだろうか?
命を、傷を…痛みを…
シル「リュー…
私にとって、あなたは英雄よ?」微笑
リュー「!!」瞠目
シル「だって…お陰で、今があるもの^^
幸せな今へ、繋げてくれたもの…
あなたが、頑張ってくれたから…
傷付かないべき人達を巻き込まないように、必死に頑張ってくれたから」
リュー「…シル…私は……」
復讐の為に――
その言葉は、口に出る前に塞がれてしまった…
彼女の、右人差し指で……
シル「リューは…クラネルさんとは、違う…
ちゃんと、背負っているでしょう?
重みと、罪と、命も…その全てを……
だから…復讐者でも…犯罪者でもない……
誰になんと言われても…
私も、こう思うわ
英雄だって――」微笑
シルは私の右手を両手で取って、眩しく微笑み掛けた…
外套の明かりがチラつく
一点の光が、白く滲み、視界までをも奪っていく…‥