第74章 融和
リュー「…っ」
涙が一筋、落ちていくのを感じた…
それをシルは笑って、そっと右手で頭を撫でてくれた。
シル「………
ただ、なりたい像を思い描いて、追い掛けるよりも
大事なことってあると思うの。
ちゃんと、目の前の結果と、現実と、人と、向き合える
したことと向き合える、投げ出したりなんてしない
笑って、なかったことになんかしない
それは…簡単なようで、とても難しいことだと思うわ。
でもリューは出来ている。
繰り返さないように、減らそうと、ちゃんと努力出来ている…
ね?全く、違うものでしょう?」
リュー「ですが、それは…結果的に過ぎないっ!!」
シル「リュー…
あなたが繰り返さないように、と願っている限り…
それを悔いて、忘れず、行動に起こしている限り、
それは、『守っている』という行為に繋がるのよ?
それは…わかる?」
リュー「……ええっ」
シル「彼には…それが無いのよ?」
リュー「瞠目)!!
……‥ぁ」
不意に気付いた…
クラネルさんは、悔いはすれど、それはヘスティア・ファミリアの仲間を巻き込んだことだけ。
自分のことしか見えていない、考えられていない…主観的になって走り回って暴走するだけ。
巻き込まれて振り回される周りにまで、目を向けてはいない、考えて等はいない…
シル「彼は…独り善がりに行動しているだけ。
守っていない
逆に傷付けて回っていることを、背負ってはいない
だから……いつまでも、ブレーキがかからない、止まらない…
リューが、背負うべきではないと思うの。
彼には…ベル・クラネルには…守る価値なんてない」
リュー「何を言っているんですか?」
シル「そうしてまで守った所で…それを食い物にして、傷付けるだけ」
リュー「言っている意味が!
シル「…」
リュー「!」瞠目
哀しそうな目が、私の双眸を貫いた…
いつの間にか、涙は晴れていた
ショックの大きさで、吹き飛んでしまっていた…
シル「彼が見ているのは…理想と想像だけ
現実は、全く見えていない…
だから…傷付けても傷付けても…何もこたえていない」
リュー「ええ…知っています!」歯噛み
シル「だから……巻き込まれて欲しくないの」
消え入りそうな声で、俯いて呟くシルに…
泣きそうな表情に、思わず息を呑んだ。
初めて見た表情に――