第74章 融和
シル「クラネルさんは…なんの罪もない無関係な人の気持ちに、立場に立って、考える人ではない。
そんな人に、不幸になって欲しくないから、先を、常に考えてしまうケイトさんとは、全く違う…
彼は…自分にとって不都合な部分を一切背負わずに、人へ皺寄せを要求してしまっている」
わかっていた…
一切弁償金を払っていないことも。
そして…謝罪も説明もせず、ギルドに庇われて、犯罪行為に対する処罰を受けないものとする方針に対し
まるで、自分が全く悪いことをしていないかのように、オラリオ中を堂々と闊歩していることを…
実害を被った、被るべきでない人達の目の前で、罪悪感も申し訳なさも負い目も一切感じずに、笑って――
その指摘をすると、途端に悪者扱いを受ける、取り付く島もない…始末に負えない状況下であることも……(瞑目&歯噛み)
シル「でも…ね?
それを、指摘を、言及を、言いがかりだとしか…煩わしくしか、思わないのよ。
その不特定多数の人達にとっては、決して英雄ではないの…
ただの……人を、自分の理想だけを叶える為に食い物にして、正当化して強要する、傲慢な犯罪者でしかない…
お願い…
目を…覚まして…リュー
あれは…人が、自分から離れていく要素しか、ないのよ」
リュー「わかっています…
離れなければいけないことぐらい……
でも…
勿体ない――と…
そう、思ってしまうのです」
シル「ええ…その気持ちも、よくわかるわ…
でも…ね?
いいように、壊されてしまうのよ……世界まで一緒に、食い物にされて……
ただの…学習能力のない、責任感を持たない、懲りもせずに駄々を強要する、空っぽな常習犯集団よ。
本当に…リューの言う通り、そんな人でないのなら…
言われるまでも無く、自首するわ。
自責の念に負けて、いたたまれなくなって…
被るべきでない人達を、自分の勝手でいたずらに巻き込んだことを重荷に感じて
死に瀕するべきでない人達、巻き添えになっただけのイシュタル・ファミリアの元団員まで、死なせてしまったことも…
一体…どれほどの人生を巻き込んで、自分の理想一つに付き合わせて…泣かせてきたの?
終いには…ただその場に居合わせただけの人達を自分の手で害して回っておいて、裁かれるのはおかしいと異を唱える始末…
それが罷り通るのは…何故――?」