第74章 融和
何度も肩を叩かれて、さも愉快そうに笑われたのを、今でもはっきりと思い出せる…
私も私で…
笑いが止められなかった…
照れ臭い顔を腕で肘をついて隠しながら、酒場で仲良く笑い合った、あの温かな想い出を……
カミラは選んだ…
ファミリアには入らず、神に至り
そして…居場所の無いものの為の『居場所』とすることを…
もう…誰かが、同じように、泣かなくて済むように、と……
それらの変化を目の当たりにしてきたからだろうか…
神になる過酷な道を選んでまで隣にいることを選んでくれた人達を、条件を突破したからと重婚を許したのは…
そこまで想ってくれたのなら…出来ることなら応えたい。
出来る範囲だけでもいいから、大事にして、応えていきたい。
生きたいと思わせてくれた人達に、温かい想いを返してくれた方々に、少しでも…返したいと、想ったんだ――
それから数か月後に起こったのが、ウィーネが額の宝石を取られ暴走した事件…
時系列にして、あの3人が結界を攻撃する事件(2534ページ参照)より2日前、堕天事件(58章参照)の日だ…
それより前にミノタウロスが単独で地上に上がって攻めてきた際、
周りに迷惑が掛からないよう必死に頑張り結果も伴ったことで認められつつあって…
という矢先のことだった
本来ならば、暴走した仲間を正気に戻してから共に逃げるのがセオリー…
だが取ったのはその逆
人を傷付ければ殺処分なので、自ら人が近付けないよう、
暴走するウィーネと一緒になって街を滅茶苦茶にし、壊して回り、
近くにいたというだけで、市民や家族を守ろうと攻撃しようとされたというだけで、
冒険者を、市民を、攻撃すべき対象か否か見極めることも無く、近付く&攻撃してくるものを手当たり次第に攻撃して回り、その余波で死人まで出た
だが謝罪もない、金も払わない、何もしない、刑に処されもしない、ギルドが許さない
オラリオが、冒険者が、市民が、望んだのは…
お金を払うのは勿論のこと、『オラリオからの強制退去と永久追放』だった――
ギルドはそれを拒んだだけでなく、庇い、なんの工面もなく許せと強要した
それに非難が殺到し、更にはギルド全職員による暴動が起こった…
だから…
豊饒の女主人にヘスティア・ファミリアが入ってきただけで、ざわめきは消え静けさが包んだ