第12章 手伝いと修業
ケイト「……」
アイズ「答えて」
ケイト「……んー…早い話がさ。
どんなに奪われても、奪われないものってあるじゃない?」
アイズ「え?」
言ってる意味が解らない。
ケイト「例えばさ…一緒に過ごした穏やかな想いとか、だからこその痛みとか、色んな感情……
それまでは奪われない。
あの想い出も、穏やかな日常も…それらの経験から得たものは。
芯を強く持つ。
自分の譲れないものは…同じにならないことだった。
殺したくて仕方のない存在、それがあの人達だった。
憎くて憎くて仕方なかった。殺したくて殺したくて仕方なかった。
一人きりの地獄に追い立てられて、この手で全てを奪ってやりたいぐらい憎かった。
あくまで過去形なんだけどね^^;
それよりも、大切なものを見つけた。
独白になるんだけどさ、一言で言い表わすとするのなら…あの人達と同じ「奪う側」「傷付けたり殺す側」に回りたくない。かな。
そういうことをやって何も感じなくなったら、人としておしまいだと思う。
それが私の芯だ。同じことをやったって、報われないことぐらいわかってる。
だから私は、同じことはしないって決めた。
どんだけ傷付けられても、殺されかけても、同じことはしないって…その誓いを果たし続けた。
死にゆく姉に向けて左手を伸ばしながら、そう誓ったから。
最初で最後の約束だったんだ。同じにはならないって」
アイズ「…そう…だったんだ」
ケイト「うん。だから私は…あの人達を傷付けられない^^;
オッタルを傷付けた時、それは誓いを破ったことになるかもしれない。
そう思うとね、自分に腹が立った。同じになることに恐怖を感じる自分もいた。
何かといい理由を付けて、処理しようとしてる自分がいた。
でも…無駄だった。
いい理由なんてないし、例え本人が赦しても…私自身が赦せない。
帰りたい。護りたい。大切にしたい。その意思を通す為に、私は人を傷付けた。
脳震盪を起こさせて、動かなくさせて、勝利を収めた。
それは…片方は通っても、もう片方は通り得ない。
絶対に誰もが傷付かない道なんてないって、ティオネに殴られた後の言葉で分かった。
だからね…私にとっては大切なことだったって、思うことにしたんだ^^(涙)
だから…あの時、どんなに痛くっても仕返しなんてできなかったんだ」