第2章 冒険者・1日目
水晶の中の自分が、涙ながらに呟いている。
血濡れた家族を前に、ひざまずいていた。
『化け物は化け物らしく死んだように生きてればいいんだよ!』
『『あっはっはっはっはっ!』』
ケイト『自分さえいなければよかった?消えてさえいれば、誰も傷付かずに済んだ?
下手に希望さえ持たなければ、苦しまずにいられた?
自分さえ…いなければっ;;』ぼろぼろ
たくさんの想いに押し潰されて…気付けば…自分というものを無くしたんだ。
その内、気付けば涙ばかりが溢れて慟哭以外出せなかった。
ケイト『ああああああああああああああ;;
うああああああああああああああああああああ!!!!;』
涙が止められず、クリエイトで治そうにも治らず、蘇らず…泣き叫ぶ以外できなかった。
その時…異変が起こった。
地面が揺れる。何かが目覚める音が聞こえる。
気付けば…あたりにモンスターが溢れ返っていた。
化け物が呼んだのだと喚く声が響く。その声がモンスターによって物理的にも食い千切られる。
私は精霊に促されるまま、走り続けていくしかなかった。
その間、必死に呼びかけられていた。
再び空っぽになった。自分というものを無くした。持てなくなった。
ショックのあまり、記憶というものが消え去ってしまった。
それでもなお、人格だけはそのままで…
呼びかけられる声だけが、耳を刺す。
――自分というものを持って
育ての家族に受け入れられる前から、精霊がずっと言っていた言葉に加え
――あなたの心を見つけてっ
――お願いだから…自分というものを、持って!
――逃げてっ
――お願い、逃げて!
――あなただけは生きて!!生き延びて!
街が燃え上がる中、暗闇の中を風と雷で強制的に走らされる。
血倒れてる男の傍のインゴットを拾って精霊が武器と鞘とした。
背負い続けた苦しみや痛み・哀しみに…心を押し潰されていた。壊されていた。削られていた。
誰しも自分でできる範囲は異なる。自分のできるなりに護ろうと頑張った。護りたかった。
でも…届かなかった。失いたくなかった。
必死に頑張ったのに…届かなかった。護れなかった。
今度こそ――と感じた理由が、そこにはあった。←21ページ参照
護りたい。護る為に強くなりたい。と思ったこともまた…