第2章 冒険者・1日目
泥水しか食べたことが無く、食べ物自体滅多なことがない限り食べれなかった。
それまでは精霊が自らの力を無理やり食べさせて延命させてくれていた。
周囲からは見えない精霊しか、味方はいなかった。
寒ければ火を出して温めてくれた。
暑ければ水と風で冷やしてくれた。
ケイト『ごめん…ごめんっ……ごめんね…』じわっ
泣く時は、そういう時ぐらいだけだった。
受け入れ先が見つかったのは、両親を失ってから数日後だった。
それからかけられた言葉は、優しく温かなものだった。
それでも…それに気付くことさえも、当時の私にはできなかった。
『辛かったね』
ケイト『?何が?』←日常だったからもはや何とも感じていない
『苦しかったでしょ?』
ケイト『?どこが?』←同様
自分に対して理不尽な扱いを受けても何とも思わない。
他の人に対して逆にされていたら、痛みがわかるからこそ助けたいと思って行動に移す。
その本質が助長させる要因となったのかもしれない。
心の感覚が麻痺しているものの、人にはしようとしない。
「痛いのは誰だって嫌でしょ?」という前提が、自分の中から離れなかった。
結果として、育ての両親に優しく受け入れられることになった。
妊娠しているのかお腹を大きくした女性は涙ぐみ、私を優しく抱き締めた。
男性はその女性ごと抱き締めながら、頭を撫でた。
表には出してもらえない。
それでも…子供が産まれる所を初めて見て、優しい愛情を等しく注がれて…
無気力な心が、少しずつ回復していった。
女の子『ねえ、ケイトお姉ちゃん。大好きだよ^^//』
ケイト『!…私も、シルキーのことが大好きだよ^^//』
シルキー『えへへ♪内緒だよ^^//』シー
ケイト『うん!^^//』
シルキー『だからね?高い高いして♪』ぱたぱた
ケイト『いいとも♪』にかっ
無邪気に接してくれる妹ができて、私はただただ嬉しかった。
大切にしてくれて、愛してくれて、この上なく…人生の中で一番幸せだった。
失いたくないと思った。護りたいと思った。心から願った。
その為に、自分より強い兵だけを相手に、必死に剣術と体術を磨き上げ続けていった。
やっとできた、本当の『家族』という存在を護りたくて…大切にしたくて……
その当時の私は、ただただ必死だったんだ――