第70章 新天地
だから…
敵であろうが味方であろうが関係なく、幸せな生活を送れるよう保証している。
甘さとも言えるものだ…
人を犠牲にして得る幸せなど抱けない。
そういう感性だからこそ、価値観だからこそ、なし得ている現状だ。
譲れないものとして、願い(感謝の証)として…祈りとして…今もなお貫き続けている。
前々世での爺やや乳母、第三王子や父代わりとなったセレネや妻も当然ながら、前世での父上や母上と妻と娘達や志半ばにして死した友人達…
これまで関わった全ての霊への、幸せであって欲しいという…
手向けとして…弔いとして……
祈るように、その生き方を敢行し続けていた……
関わるからには…半端な想いでは嫌だ。
嫌な想いをさせたくはない、あんな辛酸を、心痛を、味合わせたくはないと…
仕返しも何もしない…
だがそれは、同類に成り下がらないという事象を引き起こす。
それに伴い、復讐者を作らない、慟哭者を、泣き寝入りする者を作らないという結果を出している。
人が人を裁いてはならない。人を裁くは法でなくてはならない。
『私刑であってはならない』…
でなければ…世の中は混沌に陥る。
戦国時代よりも凄惨な、人の命を死で死を洗うような…
争いしかない、絶望(世の中)へ――
自殺に追い込むこと(いじめ)も、その手で殺すことも、人の手で殺させることも、意図的に傷付けることも…
決してしてはならない。
もしそう(現実に)なれば…その殺された人と関わる人々の生活は変わる。
これまでの常識が揺らぎ、覆り、辛酸をすすることになる。
そして…復讐者に満ち溢れることだろう…‥
現実的な話になるが…
実際に辛酸をなめているのは
身勝手に振る舞う輩などではなく、それによる被害を受けた者達とその家族と友人達だ…
誰でもいいから殺して死罪になりたかったという身勝手な理由で、刑事の娘を殺した場合
もし仮に私刑がありになれば、刑事は迷いなく殺しているだろう。
だがその者達にも家族も友もあり、人を裁くは法でなくてはならないという理屈が足止めになる。
結局は、法を守る者ばかりが、守らない者により辛酸も心痛も否応なく与えられる。
それを教師として、他を顧みないものになってはならない。
それを反面教師としなければならない。
決して、同類になってはならない。