第70章 新天地

ケイト「え？

好き嫌いを否定されるのって痛くない？
そりゃ存在も傷も否定されればもっと痛いのは確実だけれど…」

フィン「痛いだろうが問題はそこじゃない；


今回のことは、君が放っておけない事態を引き起こした根幹、根底を見据える為、
自らの深淵、土台を理解する為の、『神から意図的に与えられた試練』だったわけだが…

今回ばかりは君のその優しさも、少々を通り越してうんざりしそうだ」

ケイト「！！

……私の…根底？」

フィン「ああ…
概ね、君はザンザスや白蘭と自分を重ねていた。

得ただろう傷も、それを起こした経緯も、望みも、本心も、感情も、全てを無いものとされた上で
本人の意思も心も考えず、「力を貸してくれる仲間」とされたことも、都合のいい出しとされたことも、何もかもが…

実父の扱いとよく似ていた。
本人の心や意思に耳を傾けようともしないまま、勝手に組み込まれている点が特に…


だから自分の事のように何度も言った。
私が白蘭なら耐えられない。ザンザスなら耐えられない。その扱いは非人道的だ。残虐的、残酷過ぎる。

暴力ではないが、精神的暴力だ！と…


仲間の誰もが、それをした彼をいい人とした。
そしてそれに伴い、傷を更に抉り続ける。

その辛苦を知るからこそ、心痛を身を持って味わってきたからこそ、わかっているからこそ…酷いことを行い続けていながら
誰も気付かず、平気な顔をしてそういう仕打ちを続けながら仲間と言い、傷付けて等はいないといった顔で笑い続ける。

その仕打ちの残酷さを、残虐さを、理不尽を、非道さを…嫌というほど身に染みて知っているから……


だからこそ…君は、何度も言った。何度も執着した。

君が、君である為に…君が、君の中にいる本当の自分が、悲鳴を上げていた。
それに気付けないまま、寄り添えないまま、中の自分に駆られるままに悲鳴を上げ続けた。

納得するな。このままではいけない。目に見えない残虐なことを、こいつらは笑ってしている。気付け、気付くんだ、とね…」

ケイト「…なるほど。

でも、せめて存在する世界が一つでもあったら
フィン「そうなれば全て死ぬ。だから消された。

手は無限大全て尽くした。
未来、今、過去、平行世界、ありとあらゆる全世界の神々全てが力を結集させて封印する手もあった。
が、それでも無理だった。全て死んだ」