第70章 新天地
フィン「そう。結局はそこに尽きる…
君に足りないのは…人のことばかりで、自分に目を向けてやれないこと。
自分を大事にするよりも、人の心痛ばかりを汲もうとすること。
そこも大事には違いない。
だが…それで自分を蔑ろにしてしまえば本末転倒というものだ。
自分が潰れれば、元も子もない。
悪事に手を染めている自覚はあるか?
そう問いかけるだけでは何ら意味がない。
当のしている本人が動かない、動き出さないのだから…
徒労に終わるだけだ。
それこそ自覚してくれ。無駄な努力だ」
ケイト「…やれるだけのことをするのは、悪?」
フィン「悪ではない。
が、君がシャカリキになるべきことではない。
悪いのはいじめられっ子ではなく、いじめっ子だ。
増長し、助長されるがままに横柄になり、蔑ろにする。無いものとする。
ただの犯罪者だ。その自覚もないまま他へ同じように振るうべきだと嘲笑う殺人者だ。
そんなものにとらわれている時間が勿体ない。
勝手に地獄に落ちていろと思った方が余程時間を有意義に使える。
無論そこには、実父や彼を善人と言い、被害に遭ったものの傷を情け容赦なく抉る人々も含まれている。
人のことを気にするのはいい。気に掛けるのもいい。
だが決して振り回されるな。
ゆだねるな。
この話は、どちらかが折れるしかない…『平行線』なんだ。
地獄に落ちるという選択をとったのだから、勝手にさせておけばいい。
人に『止める権利』はない。人の道の選択権は本人にしかない。
勝手に地獄へ落ちていろ、そう認識を改めた方がいい」
ケイト「地獄へ…」
フィン「確かに聞いてくれる者もいる可能性は0ではない。
だが…それでは本末転倒だろう?
優先順位を違えるな。
本懐を見失うな。
大事にすべきは何だ?
減らしたいのはどちらだ?
減らすべきは何だ?」
ケイト「…殺されて傷を負い、更に負わされ続けるもの…
つまりフィンが言いたいのは…
「最大限減らす努力をしたのだから胸を張れ。何を言われようが動じるな」ってこと?」
フィン「ああ。
毅然とした態度で臨むべき、動じるなという意味だ」
ケイト「……痛くない?」
フィン「やれやれ…
今回ばかりは、辟易するよ…
君は人の心に寄り添い過ぎる…
そこが美点でもあり、だからこそ惚れたのだけれど……」