第69章 文明開化
『誰にでも心も気持ちもある。
人の心を捨てればそれは悪だ』と認定条件を改めた。
いくら言っても聞かず、人と扱わないものには距離を取る外ない。
自らその選択を取ったなら、今はまだわからないのだろうと距離を置くのが最善。
無理を強いればどちらも辛いだけ、いくら己にとっては正しくとも押し付けであってはならない。
そう重要な点を纏め上げ、しっかりと残すことになった。
力で解決する上においても、一方だけが全てを清濁併せ吞んだ状態のまま放置してはならない。
一方だけが押し通り、他が全て通らなければ、力で何度も解決されれば、互いにとって亀裂にしかならない。
彼が呼んだ災禍、怨嗟、末路は、これまでのツケ、自らの言動が呼び寄せたものだ。
ケイト「ひっく;;ぅっ;;
ぇっ;;;;ぇっ;;;;」
昔の夢でも見ているのか…僕の胸へ縋りつき、急に泣き出した。
声を殺しながら、胸元を強く両手で握り締め、何も言わず、嘆かず、泣き続けた。
鼻水と涙でぐしゃぐしゃになり、既に20以上もの水滴がぼとぼとと落ちていき、僕の胸元を濡らしていた。
そっとケイトへ寄り添い、頭を撫で、包み込むように左肩に僕は右手を添え、抱き締めた。
意識をケイトへ向けると、容易く伝わってきた。
実父に蹴られる痛みが想起する。好き放題にされ、感じる感情も心も無下にされる。
誰も聞いてくれない、理解してくれない、嘘つき呼ばわりしかされない。
誰もいない。話せない。話したら殺される。感情を吐露することすら赦されない。
いくら聞いても、こちらのは聞いてくれない。少しでも話せば疲れたと言われる。
実父に至っては何か言う、泣くだけで殴られる。小さい頃からの積み重ねで染み付き、大きくなって減ったとしても出来なくなっていた。
更にいじめを受け、話し掛けられない限り話せなくまでなった。
だからこそ…力で押さえつけられている側の、寄り添われないことへの怒りが無視できないのだろう…
『人の心』を感じられない振る舞いも、それを当然と、ないものとされ続けられる無念も…よく知るもので、常日頃あって当然とされたものだったから……
どうしても、他人事ではいられない…
あってはならない。
それを痛いほどに理解していた。
だからこそ…放っておけなかった。
地獄に落ちる方も、強いられている方も、どちらも…