第69章 文明開化
一方、ケイトは半年目を覚まさなかった。
出産まで残り4か月…
目を覚ましたばかりのケイトは未だ頭がはっきりとはしていないようで…ぼんやりとしていた。
一言三言話してうっすらと思い出せたのは、初代へ怒りのあまり吐き出した暴言、だが悔いてはいないこと。
そもそもが初代は、自分以外を守る為なら『殺し』でも『傷害』でも正当化する。
守る為にした手段全てを、「必要なことだった」と受け止め、流しているのだ。
だから、あんなことが出来ていた…
殺しを繰り返すまいと努力もせず、まるで他人事のように笑っていられ、そればかりか誰も責めないのをいいことに自ら責任を取ろうともしたことが「一度として」なかった…
泣き寝入りする人達を増やすことも、自分が殺した人を仲間と抱く人達へ心中も考えず土足であがりこむばかりか堂々と頼み込むことも、傍から見たら無神経かつ無責任で信頼に値しない人物と感じさせる言動も…
そういう精神構造をしていた。今世の彼もまた同様に…
結論として言わせてもらうが…それでは組織が回らない。
少なくとも、信頼関係が構築されない。
いくらいい所が在ろうとも知らない人がほとんどだ。
接点がないのにいい所を知っていて当然、殺しでも何でもされても許して笑って当然、とされるのも甚だ遺憾だろう。
逆に殺されたら降ってわいたように激昂し、怒り任せに殺し、自らがした殺しは必要なことだった、で済ませられるのだ。
自分許して人許さず、責任の追及でも周りの人がそんな人ではないと叫んで守り、敵だとされてしまう。
殺された側からしたら仇討ちの念が強まる一方。
信頼関係を構築していく上では致命的な欠点だ。百年の恋も冷める身勝手ぶり。
命を預かっている身として、軽率過ぎる配慮ない言動がかなり多い傾向にある。
ので、部下に当たるケイトが尻拭いや後始末に奔走しており、死ぬほど大変だった。
ケイトがいない世界でもGのような幹部ではなく、それより下の人達が筆頭となって頑張っていたという…
そういう人なのだと…割り切る外ない。
だがそれでは…身内を殺された仲間からの協力は得られない。
そんなことをして責任を取ろうともしない人と協力関係に至ろうとは思えない。
正直、協力するに当たって不安を感じる人物としか映らない。
相手のことを考えていないので、受ける心証が悪過ぎる。