第69章 文明開化
……ずっと…ずっと……
誰にも頼れなかった…
助けてくれなかった事実が、現実が…君を苦しめてきた。
その内…膨大過ぎる思いを誰にも出せず、パンクしてもなおぶつけるまいとするほどに…
本来ならば…暴れ出していただろう。
人のこと等知ったことかと喚きたかっただろう…
だが…それ以上に、される側というものを痛いほどに知っていた…
気持ちも、痛みも…その想いを知るからこそ、してきたからこそ…
それを軽視せず、先んじて自らを咎め、踏み留めれるからこそ…
意図的に与えない人道を歩んだ。
だが、だからこそ…尚更に潜め続けてきた想いはより一層濃いものとなり、整理がつかなくなる。
話せない障害を実父から植え付けられたことで、心中のものを纏めて話すことさえ苦手になってしまった。
更には…そんな彼女に言う軽口…
出来て当然とばかりに言われ、辛い思いもしてきたはずだ…
話す相手さえもおらず、まともに聞いてくれるものも家庭内外に問わずおらず
練習さえもできず、経験もないまま、不十分なまま、あって当然の環境で育った各々の普通を求められるのは…
さぞかし、辛かっただろう…
出来る範囲のことは全てやっているのに…
増やしていくように努力しながら頑張っているのに…
それをいつまで経っても見られない。頑張りと認められもしない。
辛い質問をしてしまったかと、後で後悔しかけたが…ちゃんと正直に打ち明けてくれた。
やや開き直りっぽくはあったが…今の自分の全力がここなのだと理解しているようにも見えた。←3252ページ参照
ある意味、嘆きに近かったとも思う…
さぞかし…苦しかっただろう……
フィン「…おやすみ…」なで
無防備に、心底落ち着いたように見えるケイトへ…
ゆっくり、お休み…今だけでも…
そう、想いをのせるように唇を重ねた。
愛しい妻に、初めて心底惚れた女に…微笑みながら……
流石に50時間も待つ訳にも行かないので、満足するまで中の進む時間のみ早くする結界を張ることにした。
体の老化も完全に止まった、そう神から伝えられたのは…つい最近のこと。
だが本人からすれば、そんなことは非常にどうでもいいらしく。
『こんな時間をもっともっと作りたかった』という想いからのものだった。
可愛い…愛しい…そう思うのは、僕だけなのだろうか…