第68章 騒動
跪いた折、第2王子から気に食わなそうに「自分で考えたのではないのだろう」と舌打ちされ、第1王子は興味なさげに窓の外を見ており、第3王子は自分のことのように嬉しそうに微笑んで私を見守って下さっていた。
王から戦果を与える為と前置きされ、質問は始まった。
此度の動き、主の独断と聞いたが真か?
「最小限の犠牲で最大限の成果を出す為です
逃げるしかない、が、多勢な分より渓谷からの退避行軍に手間と時間がかかり
その隙にも攻められ絶望、敗北感をより一層濃く敵軍へ与え、一戦で済ませられるかと存じます
今後同盟を結ぶにおいても被害は二戦分より非常に少なく、国交に支障は生じ得ません」
何故背後ではなく側面からなのか
「側面への攻撃の方が危機感を抱きやすく崩れやすい
何より…視界に入る分、背後からより動揺が明確に拡がりやすい
味方に教えなかったのは…敵を騙すにはまず味方からと言うでしょう
知られていれば僅かにでも動きに出、悟られる可能性がありました」
山からではダメなのか
「山から勢いを付けて攻めたとして
逃げる場所は山か平野、ならば平野一択でしょう
そうなれば行軍もしやすく大軍なれど機動も取れてしまい迅速に対応され、逃げ切られてしまいます
何より…敵軍へ心身共に余裕を与えてしまいます
なので敗北という印象も抱かれず、一時撤退と負けを認めず、更に戦が二戦、三戦と続き、双方共に被害が生じます
そうなれば…今後の国交にも支障が生じましょう…お互いに」
この戦法は誰が考えたものなのか
「この戦法は私一人で考えました。爺やは頷き、賞賛して下さいました」
本当に一人で考えたのか?相談出来る軍司は?
「おりません。(追放された島に)いるような環境ではございませんでしたので」
大臣「聞き捨てなりませんぞ!」
国王「構わん…クレタ島を主にくれてやる。見事収めてみせよ!」
「はっ」
国王「…父として向き合えてやれなかった…せめてもの罪滅ぼしだと思ってくれ」
「……お言葉ですが…あなたを父と思ったことはありません」
大臣「貴様!無礼であるぞ!!」
「私の父は、聖職者です。私の母は、乳母です。私の祖父は…爺やただ一人です」真剣な目で国王の双眸を真っ直ぐ見つめる
国王「……そうか…では行くがよい。期待しておる」
「はっ」立ち上がり一礼し背を向け振り返ることなく去っていく