第68章 騒動
そんな過去があったことさえもおくびにも出さない、表にも。
もし争いが激化すればより多くなり、相手の罪が重くなる=『我慢した方が「お互いの為」になる』。
問題は自身を殺してでも行っていることだ。自分が希少過ぎる存在だという自覚がないこと、理解を得られ辛いこと。
律儀に守る存在は非常に少なく限られている。
世の中で否が応にでも知ってきただろうに…
あの世でお母さんに会った時、人としての品性を損なう汚らわしい言動を取っていながら、『頑張りました!』だなんて胸を張って言えない。
意地だろうが何だろうが、殺されかけても殺そうとはしない。
結果として…理解できないと取られることの方が圧倒的に多い。
それはそうだ…誰もが自分の命が大事だろう……
だが…彼女は……自分の命を大事とは思えなかった……
それすらも許されない環境だった。
誰からも、守られなかった――自分からも―――
皆が皆、思ったように行動する。
嫌なら怒る、罵倒する、暴言でも暴力でも振るう。
だがケイトは逆だ。
自分を殺してでも実行しないしさせない。
あの世で待ってくれている大事な者達への手向けだと、
生きたくても生きられない大事な人達への誠意であり恩返しだと。
最初は違っただろう…
純粋に感情を感じ、表に出ていた。
それすらも阻まれたのは…それに対してされ続けた、徹底的な、実父によるDV、過剰なまでの暴力や暴言…ストレス発散の捌け口、所有物扱い…決して尻尾を掴ませない。
次第に薄れていき、最後にトドメとなったのが外でのいじめ。
助けを求めるのもやめた。声も出なくなった。自分から話しかけるということが出来なくなった。
嘘つき呼ばわりされて、いじめられて、家と同様に痛め付けられ傷付けられるのが落ちだった。
家では実父がいない時でも、実母や実姉から余裕もなく取り留めない愚痴を言われるばかりで、返事を求められるだけ。話したいことは決して話せない…
同じく言った時、実母に言えば「私はしんどくないって言うの!?」、実姉に言えば「ケイトはまだマシな方。可愛がられてる」。
聞く耳など持たれた試し等ない。実父は以ての外…聞くはずもない。人扱いされるはずもない。いうことを聞く従順なおもちゃでしかない。
が、『死にたい』以外の欲求と感情が亡くなるのは…比較的早かった。