第67章 躍進
フィン「君は、信じてきた過去が、時間が、費やしてきた献身が、報われることを信じたいだけだ。
彼そのものがそんなものではないことぐらいわかり切っているだろう?」
ケイト「わーってる…
わかってるから…
これ以上実父と重ねさせないで」
フィン「そうだね…
実際には殺してない分、彼よりはマシだ」
ケイト「!!…え?」
フィン「君の実父は…最初に既に殺されていた。
死体を魂ごと操り、生前と同じく暴力をするように動かされていた。
正確には実父の魂との対話の際、自身を延命させることを条件に操られるように唆した。
操られている間に何をするのかまでは教えていなかった。
が…君へ実父がしたように、いくら殺し掛けても治っていくことを知らなかった。
だから…10歳の頃、君は生き残った」
ケイト「……誰の、死霊術?」
フィン「さあ?
単純に、本家を名乗る分家のものに依頼されていたそうだが…
それもそれで、程遠くない時期に死んでいた。何分精霊の怒りを買ったそうでね…
だから…実父の方が、まだマシだ。
心を痛め付け、傷付け、搾取し、利用し…それでも、殺さないだけ、命の重みを知るだけ、まだ人としてはマシだ。
この情報を与えたのは…世界樹の意志らしい…
見せてくれたよ…世界樹が見ていた、世界の始まりから…
君のことを心配して、ずっと見守ってくれていたことも……
だから………」
フィンが少し上を向き、それから俯いた。
木が揺れ、慰めるように頬を優しく撫でる中
急に私を抱き締め、私の左頬に左頬を付け、両腕を背に回した。
ケイト「……うん…そうだね…(俯)
だから…なんだろうね…
結局私は…嫌うという行為も、嫌っているようだ。
いい加減、踏ん切りをつけないと…前に進めないよね。
ごめんね…
私の、乗り越えるべき課題なのかな?」
フィン「自分を大事にすること。
人のことを人以上に考えることに勤しむだけではなく、己のこともちゃんと考えること。大事にすること。それが君の課題だ」
ケイト「……それ、魂が死ぬより難しい;」瞑目
フィン「難しくてもやるんだ」
ケイト「勿論やるよ。
もう心配かける訳にもいかないから。
あの世にいる大事な人達にも、今いる大事な人達にも…
だから…また、同じようになり掛けたら、『その前』に止めてね?」
フィン「…勿論」