第67章 躍進
月明かりが曇っていたことで、僅かに暗闇が増していた中…光が差し込み、僕達を照らした。
抱き締めたまま離さず、しがみ付いてまで共に居たいと言動で示すケイトに…笑いが止まらなかった。
フィン「…ふふっ^^
やりたいことは…変わらない。
僕の全ては変わらず、一族の復興に捧げる。
だが…この時だけは…家族の時は、ありのままの僕でいさせてくれ」微笑
ぎゅっ
すりっ
ケイトがしてくるように、抱き返す力を強め、ケイトの頬を撫で、自身の頬ですり寄った。
自然と笑みが浮かび、口がほころび、満面の笑みとなる中…
ケイトもまた、満面の笑みで…心の底から安堵したように、表情も何もかもがほころんでいた。
こんな日が、ずっと続いて欲しい…
あの想い(3016ページ参照)は、偽らざる想いで…
僕の本心であり、僕が僕である為のものだ。
欠かせない経験で、僕しか味わったことのないもの…僕だけのものだ。
だが…厄災が朝に迫っていたなど…知る由もなかった;
あの時…本当に感謝していた。←2997ページ参照
それは本心だ。
新婚旅行中とは言え…一族の現状を無意識に見て回っていた。
同盟を組みに行く際でも、また同様に…気付けば視線が行っていた。
ふとケイトといる時に思い出し…世界を救った後も、迷宮を全階層踏破した後もなお続くそれに、僕は嘆くように呟いた。
それを聞いてからすぐ、ケイトは必死にその日の内に纏め上げ、防衛隊の小人族を引っ張り、魔導列車(1357ページ参照)で魔法大国アルテナに向かい、提出したのだ。←3017ページ参照
だが…出来ることなら、一人でやるのではなく…一人で考えて突っ走るのではなく…僕も…共に……果たしたかった。
論文の書き方を教えたり、纏め方やアピールの仕方を伝え、共に工夫を凝らしたが…一緒に、その道を考え付きたかった。
共に…『一族の復興』という偉業を、成し遂げたかった。
僕には、0歳からの記憶がある。完全記憶というものなのだろう。←1561ページ参照
母親の胸に抱かれていたことも、父がいつも他種族に腰を低くしていたことも…母の母乳の味までも、全て覚えている。
43年間…その中で培われ、実を結んだ野望は、また脆く崩れるものかもしれない。
ならば…僕は、永遠に続いてゆくだろう基盤を作り上げる先人となろう。