第67章 躍進
それを言うのなら…僕の方だ。
僕が、変えてもらった、命を助けてもらった、たくさんの刺激をもらった。
違うと言ったのは…そこなんだ。
与えてもらってばかりだと、君は言う。
…違うんだ――
僕が、与えられてばかりだった。
だと言うのに…何も求められなかった。
そこが寂しいし…信頼されていないようで、全くと言っていいほど期待されていないようで、堪らなく不安にもなった。
もしも…変えてもらったことが、そうなのだと言うのなら…言葉にして、きちんと言って欲しかった。
本人からすれば、伝えているつもりだったようだ。
いつもありがとう、という言葉で…
だが、その対象を教えてもらわなければ、どこにどう感謝しているかなどわかりようもない。
単純なすれ違いだった…
今までが、意欲的に頑張り過ぎていたのかもしれない。
野望、一族の復興の為に、名声に関わらない範囲で手段を選ばない時もあった。
最初こそあった苦痛が段々と鈍くなり、その内…ほとんどのことをそつなくこなせるようにまでなった。ならなければならなかった…
仮面で、偽りばかりで覆って…何が本当の自分かさえも見失ってしまっていた。
そうなってもいいから…そう在ろうとした。一族の光となろうとした…
それを君が叶えてしまって、徒労に終わったと…そう、思いそうになったのだと思う。
だが…それは違うと、教えてくれた。
君はいつも真摯に…正直で、偽りなく、ありのままで接してくれる。
だからこそ、惚れたのだ。
十分だ…十分過ぎるぐらい……ちゃんと、見てもらっている。
本当の、自分というものを――
少しは…向き合えているのだろうか。
それまで被り続け、執着していた、偽りの仮面を破って…自分という、ありのままの存在と……
ケイト「フィン」むにゃむにゃ
フィン「?」
ケイト「しゅきいい…ありがとお」
フィン「ぷっ)…
^^(くすくす)
礼を言うのは…僕の方だ。
ありがとう…(ちゅっ)←額に口付けする
変わらず、見捨てず、いつも…本当の僕を見てくれて」なで←右手で頭を撫でる
喪う前に…ありのままの僕を引きずり出してくれた。←640ページ参照
フィン「仮面の無い、飾らない僕を…愛してくれて、ありがとう」
偽らざる想いで向き合っていこう――君のように、何事も真摯に…