第67章 躍進
ケイトが小人族の全種族の内最も秀でている分野を教え、終末神を浄化して救った後…
いつも俯いていたはずの小人族の目は誰もが希望に満ち、光に満ち満ちていた。
一族の誇りとなるばかりか、自分にもできることを知り、奮起させ、これまでの理不尽から『自ら』立ち上がらせたのだ。
そのことから…まず、大前提から間違っていたことに気付いた。
僕がしていたのは…名声を取り、英雄となり、憧れて目指すものを増やすだけ。
だが…それは誰もが有しているものではなく、一族全体が秀でているという証明にはならない。
皆を動かすには――小さ過ぎた
ケイトは一族の現状を聞き、即座に動き出した。
一族の誰でも、皆にもできることを模索し、探し、その日の内に自分が編み出した技術を論文として書き記し、
魔法大国アルテナに論文を提出し、全種族へ証明してみせるだけでなく、一般人に至る全員にまで知らしめた。
魔力が無くとも、体外にある魔力や魔素を吸収し、使用できること。
小さい体故に、魔力集中による強化を用いる際、必要となる魔力量が少ないこと。
その上で発揮される力の量の調節が、意識すべき体全体の範囲が狭い為、最も秀でていること。
魔力集中でも一部分でも全体でも、小柄であるが故に密度も量も共に最も一瞬で集中でき、力も発揮できること。
魔力集中だけでなく、集中した魔力の瞬間的な体内移動も、小さいが故にすぐでき、最も早く望んだ場所へ移動し終えること。
表面積が小さいからこそ吸収できる絶対量は限られるが体格故に問題なく力を発揮できること。
表面積も体全体も小さいが故、意識もより繊細に張り巡らせやすく、魔力吸収の取っ掛かりが掴みやすいこと。
防衛隊に所属している小人族を引っ張り出し、実践してもらい、全員が修行を積めばできることを、皆に証明してみせた。
そこからだ――…
憧れだけではなく、『自ら』研鑽を積み、変わろうと奔走する同族が目に見えて増え出したのは…
真の勇気を抱く一族たろうと、小人族であることを誇り、堂々とし、勇気を出すのを当然とし出した。
女神に続けと、我先に駆けてゆき…誰も置いてけぼりにせず、俯く同胞へ『手を差し伸べる同胞』が増え、全体が加速度的に変わった。
ただ目先のものを救うだけでは――ただ名声を貪り有名になるだけでは――変えられるはずもなかった