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Unlimited【ダンまち】

第67章 躍進





仮面を被る前までの僕は――


――どうだっただろう?



必死に名声に縋りついた。もがいて、あがいて、それでもいいから…

あんな……

(火が視界に入ると共に熱が顔に当たる感触がする。

振り返ると…)


あんな別れ方だけは――嫌だった

(両親が怪物の牙により血に濡れ、俺(ディムナ)の前に、足元で突っ伏していた)


あんな絶望だけは…繰り返してはならないことだけはわかっていた――

(同族(小人族)が我先にと背を向けたまま、振り返らず蜘蛛の子を散らし走り続けてゆく)



ありのままの僕を…

蔑められ自身の一族そのものを下に見て周囲へペコペコするばかりの情けない両親や同族とは違うと、フィアナになろうと躍起になっていた当時の俺(ディムナ)から――
一族の復興をなそうと、一族の光になることに己の全てを捧げようと、仮面を被り、自身を偽り、清濁を併せ吞んででも一族を変えようと本当の自分を殺し続けていた僕(フィン)から…


解き放ってくれた。



ディムナ以外を、名と共に捨てた――

小人族というだけで何もかも諦めたように笑い、他種族から馬鹿にされ何も言い返さず頻繁に搾取され、自身を卑下する両親を唾棄した。
いつも俯いている同族達も、見ているだけで苛立ち、嫌っていた。

だが…本当に勇気を持っていたのは、自身が嫌って唾棄していた両親だった。
両親の制止を振り切り奔走した。勇気でもなく、蛮勇ですらなかった俺を庇って死んだ、勇気の意味を、一族の希望を身をもって教えた両親は…血にまみれながら、最期に俺を見て安心したように笑っていた。
涙に滲む視界の中で、確かに…一族の希望を見た。
人生全ての涙が出たのではないかというほど慟哭し、涸れるまで泣いた。

僕の光だった両親を知り、知ったその時に喪い、一族の復興を、生まれてくる同族に希望を与える光(フィン)となろうとした。


だが…人を変えるのは、自分を変えるよりも難しかった。



小人族が全てにおいて最も劣るとされる前提…
蔑む者達しかいない環境…

それらが変わらない内には、どうしようもないことを…ケイトが教えてくれた。


ケイトがしたのは…『全種族の内、小人族が最も魔力集中による強化に最も向いていることの証明』。
そして…『終末神を浄化し、世界を救ってみせた実績』。

それらだけで…大いに変わった。


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