第66章 穢れ
アスフィ「情けは人の為ならず、ですか…
そんな戯言が現実になることなど、非常に希少極まりないものです。
世の中の大半以上が悪意に満ちているというのに」
ケイト「知ってる」
ノアール「小さい頃から…そういう目にしか遭ったこともなかったものね」
ケイト「だが…悪意に悪意を返せば更なる悪意になって返り、堂々巡りとなる。
いいことなんて…一つも起こらない。
恩を売っておくかというそれも、自己の利用の為だけという悪意に含まれる。
審美眼を身につけなければいけない。
見る目を養わなければならない。
力で黙らせることや、心に寄り添わず一方的にこちらの要求だけ押し付けるようなことに、傾倒したくはない。
父と同じにはなりたくない。道具、都合のいい所有物扱いしかされたことはなかったから。余計…
傷がある奴には、周囲に都合よく歪めさせられてきただけの奴には、特に――
心を助けてくれる人が欲しかった。見てくれる人が欲しかった。聞いてくれる人が欲しかった。知ってくれる人が欲しかった。
全て…無下にされてきた。自分というものが何なのかすらもわからなくなった。
何をしたいのかすらも…抱かなくなった。
けれど…今では、それがどれほど愚かなことなのかわかる。
それを平気でしてきた奴も、主張も何もしてはいけないとした人も…
主張の塊だとか、自分のしたい主張を好きなだけ平気でしてきた奴ほど言う。
人への好意を持ってのそれは、心を重んじているが故のそれは、また別だ。
限度はあるけれど…
それ以外は…ダメだろう。心を、目に見えないのをいいことに好きにするのは」
フィアナ「考えは整理できた?」
ケイト「……私が思う善性は…人が、乗り越えていけるよう強く育てることだ。
心をケアしつつ、体も同じぐらい大事にしつつ、いずれ降りかかるだろう火の粉から守れるよう動け、互いを大事にできるようにあることだ。
想いだけでは力に捻じ曲げられる。想いと力だけでは実現できない。
ついてきてくれたから、国民がいたから、私は…夢の場所を作れた。
願ってやまないそれが、現実となった。
私はそれを――永遠のものとしたい
人の穢れを祓う、拠り所となりたい。
穢れと、醜い欲と、煩悩と…戦える、憩いの場としたい」
アスフィ「難しいですよ?」
ケイト「…知ってる…でも、する」真剣