第11章 雪と真相
その件は後で聞くとしよう。
まあ…龍神がやったことは怒りの波動を送ったぐらいで、それが原因で封印が解除されたらしい。
土地に掛けられた魔法もまた、いずれにせよ長年の時が流れているから効果は弱まっていたこともあっていつ封印が切れるかわからなかった。
それこそ『時間の問題』だったんだが、ロキが言うには龍神がそれを早めてしまったことに変わりはないそうだ。
並の神経では耐えられない。
だが、彼女が耐え切って生き続けてこれたのは…十字架のお陰というわけか。
壮絶な過去だ…
一言でいえばそれだけ。だが…心に残した傷は、決して消えはしない。一生ついて回るだろう。
それを決めつけだと一言で片づけたのは、気にすることで憎むのをやめる為の苦肉の策だと考えた。
ケイトへ返す為だろう。
例の十字架を持っていったロキを見送る中、僕は…未来について一抹の不安を感じずにはいられなかった。
しかしそれを口にすると、言っていても始まらないだろうという言葉が返ってきた。
確かにその通りで、やれるだけのことはやろうとの結論に至った。
ロキ「対話しようともせんで決めつけてかかる奴等に囲まれとったら、そら決め付けざるを得んわ!
それよりもほら、楽しいことしよな!^^♪」
そんな結論に至るまで話し合っていた中、ロキの叫び声が聞こえてきた。
そちらもそちらで話し合ったのだろう。
彼女に降りかかったことは、例えるのならば…
重い荷物を持った人がひいひい言っている時、助けようと声をかけた。
だというのに相手には信じられず「泥棒だ」と喚き立てられ、周囲の人に訴えかけ続けられた。
そして…本人の主張も話も周囲は一切聞かず
受け付けないまま、『そういうことをやろうとした人』とされてしまった。
そんな環境にずっと身を置けば、そうなるのは無理もない。
でも…それでもなお、その傷付けてきた人でさえ傷付けまいと愚直に動く。
傷付けられてきたからこそ、その痛みを知っているからこそ、人に与えたくない。
純粋な正義感とは違う。その域を優に逸脱している。
正義や優しさなんて生温いものではなく、共感から味あわせることを拒否している。
街の人達と話してみようかな…
嫌わないでやってくれと、伝えるべきなのかもしれない。