第11章 雪と真相
フィン「人に下卑た目を向けさせようと画策するあんな人達がねえ…」
リヴェリア「あれは画策というよりは洗脳だろう」
ロキ「如何に『最低な奴やー!』って伝えようとすることしか考えてへんかったで?」
ガレス「聞く耳持たずじゃったな」溜息
フィン「…で?何で大神ゼウスを祖先に持ってるとわかったのかな?」
ロキ「それはこれや…英雄譚アルルェーチェ。
アルルェーチェってのは地名でな、精霊の楽園や」
フィン「へえ」
ロキ「ケイトがいっとったグレイロアの記述にバッチシ当てはまってな(207ページ参照)。
ちょい気になっとったんやけど…この挿絵、見てみ」
『!!』
リヴェリア「これは…」
フィン「十字架のネックレスか」
ロキ「そや。その英雄が初めてできた妻に送ったお守りや」
それから僕ら首脳陣は、英雄譚の概要の説明を受けた。
2800年ほど前…ヘレイオスという若者がいた。
彼は、ゼウスとダナエーの息子・ペルセウスの血を引き継ぐ息子。
つまりゼウスにとっては孫にあたる存在だった。
アムピトリュオーンがタポス王プテレラーオスを攻めた時、アッティカ地方のケパロス、ポーキス地方のパノペウス、テーバイのクレオーンと共に参加した。
戦争に勝利するとケパロスと共に占領した島々を与えられ、分け合って支配した。
彼はアルゴスのヘロースの王だったが妻も子もなく、晩年に王位を譲り「安寧の地」を求めて去っていった。
彼は神の因子を受け継いでいた。
4分の1でありながら神の血までは受け継がなくとも、『クリエイト』という魔法をその身に宿していた。
だがペルセウスの子等の中でも、彼等彼女等とは違って誇れるほどのものは何もなく、唯一あるとすれば『人を殺せぬ優しさ』のみ。
争いごとや血が流れることを何よりも嫌い、傷付けるにしても迎撃して気絶させる以上のそれは決して望まなかった。やろうともしなかった。
そんな彼は大した名声も上げられず、王という立場のみでただただ善政を築き続けたというだけ。
だが領民は全て、彼を慕っていた。それだけが…一番のものだと誰もが語っていた。
しかし彼の身体は血が故か老いを示さず、『クリエイト』という魔法を生まれつき有していたことに晩年になってから気付いた。
彼には動物の思いが聞こえた、霊が見えた、その声を聞けた、聞かずとも感じ取れた。