第11章 雪と真相
人が大っ嫌いだという感情、高い所から下を見下ろすのが苦手だという感情
それらもまた、人からされた環境故の想いと、落下した当時の経験故に抱いた想いによる決め付けに過ぎないと感じたのか…
窓際を歩くだけで怯えていた彼女が、先程のように飛び降りれるようになるほどにまでなっていた。
やり過ぎた。それに気付いてさえもいないだろう、街の人達は。
そして今もなお、過去のそれをいつまでも引き合いに出して決め付けるよう指示を出している。
その行動を恥じることもなく、傷付ける行動だと察することもなく、自分だけの基準が正しいのだと高らかに示し続ける。
ケイトのやっていることに比べれば非常に醜く、身勝手なものだ。
ケイトのそれは確かに身勝手だが、あくまで人を助ける為に自分はどうなってもいいというものだ。
人を自らを顧みず救おうとする姿勢は、その愚行ができる輩には決してできないだろう。
人として悪を必死に語り、見えている人そのものの価値観を歪ませようと喋り、言い聞かせ続ける。
その価値が歪むまで必死に主張し続ける。
彼等は決して恥じもしない。悪い行動だとも思っていない。
そういう行動をし続けておいて、伝聞を広めることで見方を減らそうと画策して行動に示し続けている。
本質を顧みず、その『一つの行動だけ』で全て決め付けて罵り続ける彼等の視野は如何に狭いか。浅はかか。
決め付けて視野を狭め、『人』というだけでもたくさんの部分があるというのに、それに決して目を向けようとはしない。
人には、それを彼女には『決して向けさせようともしない』。
それでありながら逆にされた時には、自らにはそれをすることを赦そうとはしない。
気分が悪い。飯がまずくなる。そんなことするな。
そう言えば…そう口々に言われたな。
思い返す中、彼女の笑い声が聞こえて…思考を中断した。
でもそんな街に訪れたことで収穫はあった。
ロキが言うには口伝を書き記した原書、『古びた本』があったそうだ。
それは英雄譚で、例のグレイロアの件もまた書かれており…
ゼウスを祖先に持ち、神の血は引き継いではいないものの神の因子は引き継いでいるそうだ。
龍神ではなく、それに伴うものだと知ったのはつい先程。
例のケイトの十字架に刃を突き立てようとした瞬間、見えない壁に阻まれたことから始まる。