第65章 新たな冒険
フィン「あの時…君は言った。
家族のように想い、大事にすると――
国民「あなたは…私の心を、意思を、感情を、無視するようなことは決してしないから。
傷や背景を、蔑ろになんてしないから」
こくこく←二度頷く
『国王様…これが、私達の総意です』←片膝をつき、ケイトの双眸を真っ直ぐ見やる
ケイト「……わかった…やるからには徹底的にやる。
ちゃんと考えを聞かせて欲しい。
家族だと想って大事にすると、ここに誓う」
それらのやり取りがあったからこそ…怒りが臨界点を突破した。
先程の発言へ至ったんだろう?」
ケイト「ああ…
あの時、泣いていること…気付けていたのは、フィンだけだったね。
背を向けたまま…額に神紋が浮かんで、怒りに打ち震えた。
私はさ…加害者の手助けをしたという罪は、決して消えない。傷を与える手助けをした事実は消えない。
償う気があるのかを…知りたかったんだ。
だが…本人は償う気は愚か、自分は何も悪いことはしていないとまで言い張った。
仲間を守ることは悪いことではない、って。
でもさ…それは……傷を負った事実を、傷を負った者全てを、蔑ろにする行為だ。
心も、傷も、痛みも、悲鳴も…何も、かもを……
無理に国内に置けば、針の筵に居させることになる。
償う気ならば、居させることを考えていた。償う気なんだよ、と。被害者達へ温かく見守らせるつもりだった。
だが…違った。そんな淡い期待等…抱くだけ無駄だった。
彼が見ていたのは…行為そのものであり、そのつもりが無いという事実を全面に押し出すことで、責任を放棄することのみ。
彼の選択は償わないだった。
守った姿を国民達は見ている。それによって殺される人が増えているのを見ている。
恨みを抱くなという方が土台無理だ。
悪くない人?そんな人じゃない?
そんなの…殺された人には関係ないんだ。奪われた人には関係ないんだ。
奪われた事実しか…喪った事実しか……何もないんだから……
それらが覆ること等、何があろうとないんだから――
だから…双方の為に決断した。
流れ落ちる涙を振り払い、額に浮かぶ神紋等意に介さず、彼等を睨視しながら叫んだ。
伝えた後もなお、間違ったことは何もしていないと言う彼等に…
「人の命を何だと思っているんだ!?
背景を、傷を、何だと思ってるんだ!!?」
『え?』