第65章 新たな冒険
人の醜さを存分に受けながらも、やられたら嫌だからしないと貫き続ける高潔さ、相手の立場、気持ちに立てる優しさ。
どれ程の怨念を抱こうとも貫くそれは、自分という軸をしっかり持っているからこそなのだろう。
ケイト『一番理解していて欲しい人に理解してもらえていれば、それでいい。
全員に理解してもらおうとも、受け入れてもらおうとも思っていない。
感性、同じものを見ていたとしても感じ方は皆違う。
私が彼の在り方を気持ち悪いと抱くように、私のことを気持ち悪いと抱く者も居るだろう。
私は…世界中の人が敵だろうが構わない。寧ろ……そう思って…これまで生きてきた』
闇そのものと染まった黒い目で、深い闇が自然と表出してきた。
ケイト『私を守ろうとする者など――誰一人もいない』
心の奥深く、根底に深く深く根付く、長年の経験から得た幼い闇そのものとも言える人格。
それが地面に覆い被さるように突っ伏し咽び泣き、それを庇うように間に割って入り、睨視しているように見えた。
それが…どう在っても覆らなかった強大な、彼女の闇。一度としてなかったことでこびり付いた憎しみ…
肝心な時に守ってくれた存在は…実母のみ。それ以外は一人としていなかった…
はずだった。
フィンが庇ってくれたことから、身を挺して守られたことから…
認識が大きく変わり…共に、少しずつ歩み寄り…今更過ぎると思いながらも……
ようやく、手にした。こういう人もいるのだと、皆守りたいものが違うだけ…
私達がケイトを守ろうとしてくれている存在だという認識を。
実母は…ずっと話させてもらえず人形のように思い通りに動かされたり聞き相手にさせられいつまでも話せない状態、虐待にあったが……
愛情があるだけマシだった。
実父は所有物という欲しかなく、その場その時の気分一つで自らのみにとって都合のいいサンドバックでしかなく、いい結果を出した所で俺の種がよかったんだと言う輩で、愛情があるとしても歪んだものでしかなかったから。
ここまで長かった。本当に長かった。
いい意味で変わったと言える…
その憎しみを払拭できる程、人間全てを憎んでいたそれが…今は、どうでもいいと思える程に愛する人に巡り会えたから。
フラッシュバックを起こそうとも…大丈夫だと思える。そんな人とこれからも共に居続けられるとわかったから。