第64章 新たな指摘
『大好き!!』
それを受け、嬉しさの余り私達は共に叫び、ケイトを3方向から腕の中へと押し込むように抱き締め続ける中…
彼もケイトも被害者なのだと、私達は皆理解した。
フィアナ「勝手過ぎたが故に、世界を救った彼は、世界ごと全て消されました。
原作が実現している世界は皆無、その全てが消される対象となっています。
まあ当然ですよね…
魂に能力を強制的に持たせる結果を呼び起こした『元凶』となる世界なのですから。
家で凄まじく甘やかされ続ける環境、学校でもいじりはあれどいじめはない環境。
勝手に出来るから、ずっと散々甘やかされ続けたことから、内外共に甘さが出ているだけ。彼の向ける優しさは全て甘さ。
世間の厳しさも、悲痛な想いも、何も知らないから…そう在り続けていられるだけ。
真の優しさとは…世の厳しさも苦渋も凄惨も全て味わい尽くし、打ちのめされ、大事なもの全てを殺され、奪われ、それでもなお他へ向けることのできる『慈悲の心』です。
そういう深いもの。
ということはお分かりですか?」
ケイト「知ってるからもう言わなくていいよ。
もう大丈夫。
表面しか見れない人間じゃないし、二度と軽いものに縛られたりなんかはしない。
もう縛られることは無い。
大事な国民を…家族を、あんな目に等遭わさせやしない。
その為にも…第三者の私にでもできることを考え、見極め、共に天国行きになるよう足固めをし、未来永劫続いて行く土台とする!」真剣
先を見据え、真剣な表情で遠くを見つめ、睨視するそれに…私達は感じた。
一皮むけた、と。
押さえ付けられ続け、棘付きのそれにより血みどろになりながらも、彼『のみ』をなんとかしようと暴走させられ続けていたそれから、ようやく解放された。←2772ページ参照
それに伴い、思考もきちんと正常になり、彼への執着も執心もしていないように見えた。
微塵も気にしていないようで、今から皆の未来を案じて先へ進もうとしている。
未来がいい方向を向いている…
日の目を見たそれを前に、私達3人は目を合わせ…共に笑った。
満面の笑みで、やっと…やっと帰ってきたのだと。
もう毒にも洗脳にも侵されることが無いよう、フィアナが守(しゅ)をかけてくれたらしい。
もう安心だ…
その確かな安堵と共に、私達は笑った。
おかえりなさい、と――