第10章 準備と発明
そう……
僕は、ケイトと出会うまでは…『混血では一族の希望の象徴たりえない』。
そう考えていた。
最初に先走った彼女と再会した時に胸をよぎったのは、『フィアナ』だった。
他人の為に身を挺し、護る対象から傷付けられようとも怪異から護り抜き続ける。
愚直にも見える姿勢、剣を浴び、石や罵声を浴びてもなおモンスターを探す為、ひいてはそれを倒すことで護る為、彼女は必死に立ち上がろうとし続けていた。
倒れ伏してもなお、何度も…何度も……
気付けば身体が動いていた。皆もまた同じだったようで、間に入るように街の人達の前に立ち塞がった。
今思えばその時点から僕は彼女に惹かれていたのだろう。
彼女の中に『フィアナ』をヒシヒシと感じた。
戦闘を開始しようとした矢先、階層主に血を出しながらも勇猛果敢に襲い掛かる姿を見た時、フィアナの姿と被さった。
いや、見紛うた。
記憶の映像からも似たようなことを感じていた。
決して傷付けず、護り抜く為に道を必死に歩き続ける。その姿勢が似ていた。
あれほど傷付けられ、罵倒され、暴言を吐かれ、痛めつけられてもなおやり返さず
それでもなお護り抜こうとする姿勢は誰にでもできるものじゃなく、人を想う心。
その想いを…優しさを貫き続けようとする、『勇気』そのものだった。
そしてそれは…僕が最初に憧れたフィアナそのもので、人のあるべき姿だった。
その勇気に等しい想いに、僕は何度も震わされた。心動かされた。時には激情に駆られた。
彼女に降りかかる理不尽を容認できず、冷静さを欠いた。
それほどに大切だという感情に囚われ、何もなくても気になってしまっていた。
後になって、この感情が『恋』なのだと自覚した。
そして…フィアナのことを語られたあの時(182,183ページ参照)
彼女なら…彼女とならと、気付けば恋焦がれるままにプロポーズしていた。
フィアナと重なるほどの人物に出会えたのは、42年という僕の人生の中で君が初めてだったんだ。