第10章 準備と発明
「怒らなければ伝わらないこともある」
そうも伝えると、困惑を顕著に示し出した。
きっとケイトの頭の中では、生みの父親や周囲から当たられ続けてきた当時の記憶がフラッシュバックしているのだろう。
フィン「当たると言っても、暴力や暴言といった形じゃない。
苦しかったことを伝えたり、鬱憤を晴らす為に楽しいことを共にやろうと連れ出したり…
君の知らない当たり方がたくさんある。
君の知っているそれらは全て、君を傷付けるものしかなかっただろう。
でも…それだけじゃない。精神の支え方だってたくさんある。
だから…僕に手伝わせて欲しい。わかるかい?」
ケイト「………………あの人達と同じことじゃないんだよね?」
フィン「ああ。痛みもない当たり方だ」
ケイト「……そっか…負担
フィン「気にしなくていい。
心配されないといけないほど弱くはない。
そもそも、支え合う為に複数いるんだ。
君は力が強くても優し過ぎるが故に抱え込みがちだ。
そしてそのまま自分の心を潰すことで守り抜こうとする。
はっきり言って…痛ましくて、見ていられない」
精一杯、声を振り絞って伝えた。
それで取り乱して暴走するか、少しだけ怖かった。
そうなって欲しくないことだったから…余計に。
ケイト「!!」
フィン「だから…前にも言ったように、頼って欲しい」
ケイト「!
頼ることに…慣れる」←49ページ参照
フィン「そう。
僕がそう言っていたのは、そういう意図もあってのことだ。
その反応を見る限り、わかってはいなかったようだけどね」苦笑
ケイト「……ごめん…考えてた、のに…フィンの気持ち、察せなくって」俯
フィン「同じだ」
ケイト「!え?」顔上げる
フィン「僕も、そこまで把握し切ってはいなかった。
どれだけ考えても察するにしても限界はある。
だから…謝るのはなしにしよう。
酒場で教えた僕の願い、覚えてるかい?」
ケイト「その前に考えて欲しい。目の前にあるものを。
今の君にあるものから、目を背けないで…逃げないで欲しい」←79ページ参照
フィン「うん…
向かい合って辛いのなら、共に乗り越えよう。
手助けできる場所に居るのに、できないまま…
しないまま潰れられたりしたら、それこそやりきれない。
これは僕の我がままだ。
ケイト…君は、どうしたい?」