第10章 準備と発明
その後に続けたロキの言葉が、先述した264,265ページの言葉だ。
寝入ったケイトを前にそう語られる中、深く頷く外なかった。
あの長い夜の中、君を支えたいと強く想った。
その時に憎しみがないわけじゃないことを知って、少し安堵した。
それは、正常な心の反応には違いないから。
「傷付けちゃう、やめて」と泣き叫ぶ中、『やめない』とはっきりと伝えた。
ずっと…そんな人達が欲しかったのだろう。
その後、「何で…今に、なって……」
そんな震えた声を出してから、目の前の理解した上で受け入れようとする皆を認識を自覚した後、耐え切れなくなったようだ。
泣きながらアイズや皆に跳び付いて泣き縋った。
泣いて泣いて泣き続けて、30分は経っただろうか…
その後になってようやく、泣き疲れたように眠りについた。
だからもう一度寝直してくることを推奨したんだけどね…
夜中のことだし、眠りも浅かっただろうし。←178ページ参照
泣きながらなおも謝り続けられる中、あることに気付いた。
彼女の精神はひどく不安定だ。
付けられた無数の傷に対して、憎むよりも『護りたい』と思う。
その揺るぎない想いが逆に、彼女を苦しめている。
憎んで人に当たれるならまだ発散するから楽だろう。
だというのに、それとは真逆の行動を取り続けているのだから精神的な負担は遥かに多くなる。
縛り、苦しめ、自身の感情を否定することで痛めつけている。
周りだけでなく、彼女もまた自身の心を痛めつけている。憎しみを抱かない方が、自覚しない方が楽だから。
まだ彼女はそれを自覚していない。
認識させるにしても、とても難しい問題となるだろう。
過去との折り合いの付け方は、ひどく難しい。
人によっては、他人や家族に当たって当然という顔をするものだっている。
そういう環境で育ってもなお、それを人にしないというのは非常に希少だ。
だからこそ、余計に心配になった。
本気で人を全て殺そうとすれば殺せるだろう。
クリエイトで作った魔法でいともたやすく、一瞬で……
もしそうなれば…今度こそ、彼女の心は完全に壊れてしまうだろうから……