第10章 準備と発明
ロキ「本気で殺そうと思っとるで、ケイトの心自身は。
でも…そのブレーキとなっとるんは、優しさっちゅうより想いや。
人を失う痛みを味あわせたくないって思っとる。
全てを失う痛みを、身をもって何度も味わっとる。
そやから余計、ブレーキの力が強まる。
それ以上に、ケイトの本質が係わってるんかもな。
こいつは…人を傷付けた後で笑ってられる人間やない。
後になって精霊にいじめられた要因教えられた後も、自分のせいかと思い込みそうになっとった。
個人にも、その行動の責任ぐらいは生じて当たり前やのに、人の行動の責任まで背負い込もうとしおる。
何も悪いことしてないのになんて言われても、もしさっき言った10年以上も募り募った心に全部飲み込まれたら殺すやろ。見境なしに。
いじめ続けとった奴等・傍観しとった奴等・生みの両親は、ケイトの良心に助けられてただけや。
殺そうと思えればいつでも殺せてたやろ。その気になればナイフ取り出してドス!ってな。
ただ苦しませたくない。痛い思いをさせたくない。同じ思いをさせたくない。
ケイトにあったんはそこだけや。
一人きりで抱え込んだまま、誰にも助け求めても無視されるままここまで大きくなった。
育ての両親と妹、血の繋がった姉以外…誰もおらんかった。
それでもいくら真心を持って必死にセーブかけ続けてても評価なんぞされん…
嫌われたくないだのなんだのと、勝手に早とちりして決めつけおった。
おまけに…街の奴等見たやろ?
ろくに人の意見なんぞ受け付けん。自分こそが正義やと思い込んどる。
反抗期やなあ。
相手の悪い所も、よく見えるようになった。
自分の悪い所だけ見て、自分だけ責めとった昔とは変わってきとる。
人の行動まで自分のせいやと考えとった時とは違って、少しずつ変わろうと頑張った。
でもその歪みが、ケイトの心を生かしてもおった。
心の安定のやり方を、自分に合ったもんを身に付ける外ない。
けどわからん。ぐるぐるぐるぐるぶつかり合い続けとる。
自分の中で憎悪を爆発させる感情、相手に同じ思いを味あわせたくない感情。
大きく分けてその二つがせめぎ合っとる。そやから嫌な夢でも見たんやろ」
大丈夫だと必死に言い聞かせながらアイズは強く抱き締めた。総勢で必死に止めた。
彼女が泣き潰れて寝こけた中、ロキは整理して語った。