第63章 新たな来訪
・同時刻、プールにて
戦国時代
私が前世にて、父上から教わった剣術。
その名を尋ねた時、見事な月と、心地よい風から、「風月流」と名付けられた。
教わったことは、2つ…
最初は…完璧に出来るようになるまで、剣を握らせてはもらえなかった。
最初に一番大事なものを徹底的に叩き込まれる。
それは『機動力』。
足さばき。
体さばき。
それらを徹底的に磨き、極め…
必ず、一対一に持ち込めるよう、場の流れを掴み、支配する。
その為に必要不可欠なもの、機動力の源であり、次の動きへの切り替えをより速くする為に欠かせないものである。
次に、相手の動きを読み、衝撃を受け流す技術。
体格の違いで真っ向から受ければ負ける相手もいる。
だから流す。
正面から受け止めてから、と、流してから、ではどちらが先に攻撃へ転じれる?
答えは、紛れもなく後者である。
流しに必要なものは…洞察力、動体視力、観察力。
先を読む力、間に合わずとも素早く相手の動きへ合わせれるようにする為に、最初に身に付けらされた機動力がある。
スピードが上でなければ、何も当てることはできない。
虚をつかない限りは。
どんな攻撃も、当たらなければ意味はない。
陽動や誘導には使えるだろうが…
たとえ虚をつかれたとして、即座に体さばきと足さばきで当たるはずだった急所から逸らす。
たとえ当たったとしても、当たった瞬間から動くこと。
だけれども…逃げ場がない場合は必ず死ぬ。
私もそうだったし…
父上『戦場を生き延びる為の剣だ。ゆめゆめ忘れぬように』
「はい!!」
幼い頃の私は…まだ、その神髄を薄っすらとしか見えてはいなかった。
まるで瞬間移動のように音も無く消え、一瞬で思った動きを実行する。
目にも止まらぬ早業、それらが一切の無駄なく繋がり合い、全てを斬り伏せる。
道場で見せられる動きに――私は幾度となく、魅せられた
父上のようになりたかった。
それだけじゃない…
ただ、助けになりたかった。守りたかった。
それが奪われる日が来るなど…幼少(6歳)の身では、思いもしなかったのだ。
囲まれれば誰でも死ぬ。多勢に無勢。
その為の技術、工夫、発展、応用…
生かし切れず…私もまた、散っていった。
私もまた…父上と同じく
負け戦の…殿(しんがり)として……