第9章 Lv.7
フィン「そうだね。実際にされないとその痛みはわからない。
一人きりになるよう孤立させて、その上で傷付く言葉を吐き続けて、周囲にそういう認識を植え付けて、
さらには一緒になって一人を追い込むように貶し続けるように先導し、多人数にものを言わせて悪いのは少数派だと持っていく。
それらこそが、いじめという行為の全貌だろう。
一人だけになった者の心は、そうなった人にしか解りはしない。
その傷の痛みも、一人きりかどうかだけで遥かに違う。
その本質を見抜けなかった責任もあるのにそれは見て見ぬ振り。
泣いても叫んでも全て無視、嘘だと声高に言い続ければそれを信じる者もまた多くなる。
怪しむ人、訝しむ人…たくさんの人達に囲まれて、そうされ続けた者にとっては……
その傷は、人の人生を大いに変えるきっかけにもなる。
君がすべきことは、周囲からの理不尽に疑問を感じることだ。
周囲に流されて自分が悪いのだと決めつけることではない。
その上で客観視して、整理して、本当の悪はどちらかを区別すること。
助けようともせず笑ってられることは悪か。苦しんでいるのをわかっていてもなお続けるのは悪か。どれが悪でどれが善か。
たくさんのことが考えられるし、どうしてそうなのかも一方的に続けてこられた『被害者』だからこそわかるだろう?」
ケイト「…うん」
フィン「一人の環境も知らず、言っても無視して嘘だと決めつける。
本当に悪いのはどちらか、考えてみれば一目瞭然だ。
だが嫌な思いをした人間はそれに決して目を向けようとはしないし向けさせようともしない。
自分が可愛いからね。
一言で纏めると、嫌な思いをしたからこそそのことで責められたくないんだよ。
責められるのは御門違いだとさえ思っているだろう。それで傷付いたのだからと。
自分だけは見えている。他に目を向けてはいない。知ってもいない。
だから、そうあり続けていられるんだろう。
君はそれだけで悪い人達だとは決めつけなかった。
責めもしない。追い詰めもしない。一人になることで傷を必要以上に増やすまいと努力した。
そんな中でありながら助けになれる時があれば助けようと尽力した。
君は悪くないと言ったのは、こういう点からだ。
だからまともに受け止めて背負い込むのでもなく…
そういう人間もいるのだと認識付けるだけでいいと思う」