第60章 穏やかな日常
沢田綱吉のいる世界では…
いい点のみを大きく誇張して書くことで、実際には一度も『二度と殺さないよう努力しなくとも』、優しい人物という見解を見ているものへ抱かせている。
その為だけに…
都合の悪い点、特に自らが仕出かした犯罪行為によるすべき償いを一切していないこと、などは一切おくびにも出さない。
考えさせもしないよう、目先の面白さや楽しさだけに主点を置いて目を逸らさせる為に書き上げている。
白蘭へ自らした『殺し』に対する償いを一切せずに、疑問や葛藤や悩みを一度すらもしてないこと
本来、殺人者なら誰もが必ず見るであろう「自らの手で殺したもの達の悪夢」を、彼は一度すらも見たことがないこと
彼の何事もなかったかのような態度は、それらを強く示唆していた。
実際彼は…銃弾を避けれるぐらいには、死ぬ気の到達点に至ってからできていた。
光の速度のそれを倒せるようになったのだから当然とも言える。
しかし彼は死ぬ気弾を避けなかった。
避けずに何度も繰り返し、他へかかる迷惑よりも、己のしたいことを最優先にし続けた。
それは…他の気持ちを蔑ろにし、いないものとして無視する行為である。
責められてもいい人だと友人が率先して叫んで黙らせ、本来天国行きだった彼らをも地獄落ち確定と人為的にさせてしまっている。
否定するばかりで人の心に寄り添わない。
そしてそう当たったもの達からの協力を得て然るべきという態度を取り続けている。
図々しいことこの上ない。
常識があるといっても、あくまで個性的なメンバーの中のみであり、世間一般的には「あってもしない人」という認識が取られていた。
そもそもがローン払いを実行している時点で、一括払いができるほど裕福ではない。
そして住むメンバーが増え、悠々自適に暮らすばかり。
ばれなければ問題ないとばかりに彼は被害を与えたもの達への謝罪もなく、賠償もなく、話さなければばれないとたかをくくっていた。
そして…罪に問われて逮捕されるその日まで死ぬ気弾を避けずにあくまで日常の一幕のように繰り返し続けた。
只管自己欺瞞を続け、悪い点を指摘されても周囲の擁護があれば促されるままに無視する。
そりゃそうだ。
誰でも悪いことをしたと認めたくはないし、悪人と思いたくもない。
その傾向が彼の場合著しく強く、非常に主観的なだけだ。