第60章 穏やかな日常
それよりも疑問なのは守護者へ一番に名乗りを上げた白蘭だ。
聞いてみた所、白蘭は人間不信に陥っていたらしい。←2293ページ参照
気持ち悪いと感じていた一番の理由は、裏切りがあるから。
本音かと思えばそうではなく、心の内のそれはばれないよう本人には聞こえないよう囁き合う。
表向きの言葉と、本音。建前と嘘。それらが気持ち悪いという認識を抱かせていた。
いや、抱かせるには十分過ぎるものだった。
事実、最初に並行世界で得たのは…たまたま聞いた本音、裏側。
たまたま聞いたこともあったが、その量は並行世界で得た無限ほど膨大ではなく、不信感を募らせるには十分過ぎるものだった。
この世は綺麗ではない。だが綺麗な部分もある。
しかし人為的にそう見せかける人もおり、利用しようと画策する者も後を絶たないのも実情…
結論として、空虚なもの、中身が無い欺瞞に満ちたものと捉えることが多くなり
それごと楽しもうとゲーム感覚で動くようになった。
寧ろ、そうすることでしか楽しめないというのもあったのかもしれない。
しかし――そこに異分子が現れた。
私を殺してでも生きろと、私は言った。
異世界ではあっても強烈で、そういう人格者なのだろうと…並行世界の知識を経て思い知った。
彼なら否定的に殺して終わり。
その後に彼自ら作る接点など利用以外はなく、理解も無ければ見ようとすらもしなかった。
だがユニは見てくれた。静かに寄り添い、温めてくれた。
世界征服を果たした世界だった場合…空虚となったそれを埋めてくれた。
だからユニを守りたい。
それと同じように感じたのだそうだ。
きちんと見ようとしてくれる。
静かに寄り添い、疑わず、信じてくれる。
信じて、多大な力を齎すだろうそれを渡した。自分を害せるであろうそれを…
だからこそ誓ったのだと白蘭は言う。守るのだと――
ケイト「…」
白蘭「殺された世界でも…10年前のケイトちゃんを呼び出して告げても変わらず接してくれたよ。
そればかりか地獄落ちにならないよう心配するばかりで…必死に教えてくれた。
読心機を作って確かめたけど全部本音でさ…
ホント…あの時は堪えたよ(ぐしっ)
絶対生きてくれって涙ながらに頼み込んで、やっと改変できたし」
双眸から涙を流す白蘭に、私は迷わず歩み寄って頭を優しく撫でた。