第60章 穏やかな日常
『「悪質な狂暴犯罪者という認識が強く町民達には根付いており、いつ暴力を振るわれるかわからず何も言えなかったとのことです。
賠償額は最低でも10億円にも及んでおり、平気な顔をして学校に毎日通う姿をよく思わない人もいたそうです」
「周りに悪くない、悪い人じゃない、そんな人じゃないと声高に言わせて罪の意識から逃げているのではないかと…」
「「そんな人じゃない」
「よく知らないのに悪く言わないでください」
と言われていますが…
本当にね、いい人なら自首しますよ。
たとえ自首しなくとも、反省したり、二度としないようにしますよ。
非常識な行いだってことは誰の目にも明らかなんですから。
でもそれをしない。しようともしない、ずっとそうしてきた。
その時点でね、いい人という前提から逸脱してしまっているわけですよ」
「犯罪を犯し、それを一年も続けた。
罪を一年間ずっと犯しても疑問に思わない。
そして周りは悪く言う人がいれば、悪い人じゃないと声高に叫び非難する。
それも自分達が被害者だとばかりに…」
「悪くしか言わない、それが悪いことだという風に言ってますがね?
犯罪を犯したその時点で、それはもういい人ではないんですよ。
皆に迷惑をかけないため、皆がより良く過ごすために法律があるんです。
それを破っておいてね、どの面下げていい人だと語ってるんだ。
死人まで出なかった今までの方が不思議なんですよ?
捕まえようとしなかったら死人はでなかったと言いますがね?
怪我を負わせて平気な面をして、何事もなかったように学校に通えるんですよ?
いくらその人にとって『は』いい人であってもね?
世の中にはやっていいことと悪いことがあるんですよ。
正当防衛だったらやむなしでしょうが、怒りや激情に身を任せて殺人まで犯したんです」
『それが、罪を犯しているという認識を阻害させてしまっているわけですね』
「ええ。
そして終いには人を殺しました。
その行為にいずれ繋がるだろうという危険性、警視総監の認識から逮捕に踏み切りましたが…
もしそのまま大人になっていたらと思うとゾッとしますね」
数々の犯罪行為を1年間実行し続けるだけでなく、二度と繰り返さないよう償いも弁償も賠償もしないという行為も1年に渡り続けたことから『犯罪者』として扱われ逮捕された、はずだった…