第59章 承継人
ケイト「彼やその周囲を救おうと必死になる中でさ…
罵倒の方で、こういう言葉も言われたんだ……
「自分の好みにしたいだけだろ」って…」
水の入ったジョッキを煽って飲んでから、彼女は俯いたまま呟いた。
ケイト「ああいう言葉を吐き掛ける時点で、人としてどうかと思うけど?
好みにしたいだけ…
確かに地獄落ちになって欲しくないって望みから動いちゃいるけれど…
そんな言葉を吐き掛けられなきゃならないほど、「悪いこと」か?
本来あるはずの地獄落ちから救おうとする行為は…
嫌いな奴を好きな奴は…皆、好きになれないかも。
いや…当然か…
決して、相容れないものなのだから。
だから…嫌いになったんだ。
聞く耳も持たず、会話にさえならない人だから…
悪いようにしか受け取らない、とらない、聞き入れない、本筋を見れない。
と言うか…人として大切なものが何か見えてないんだね。
見えてたら…口が割けても言えないよ」
くしゃ
前髪をかき上げて、涙を浮かべながら呟いた。
言われる側の気持ちを考えてない。
それ所か、必死に危機を伝えて回避させようとする者の立場に立ってさえいない。
ケイト「ただ――ただ「好みにしたい」だけなら、あんなに必死にはならないよ。
待っている未来が苦痛に満ちているのが見えているから、危ないよと示してその道を避けさせようとしているだけ。
それを…そんな風に捉えるんだね。
同じだね…
彼も、彼の周囲も…何かしら気に食わない流れがあれば、そんな口を利いてきたよ。
気に食わないから、気に入らないから、言いたいことを言ってるだけ。
それで傷付く人の心も、感情も知ろうとさえしない。寄り添おうともしない。考えるというワンクッションもおかない。
私も…たまに言うこともあるし、人のことを言えたことじゃないけれど…
その後で…自分のした言動を背負わなきゃ…どうなっても知らないよ?
脅しでもないし、忠告だけしておくね。
ちゃんと…知っているから……
その先も…得る未来も……
そのままでいいなら…もう、何も言わないよ。
唯一、そう返しても…あいつらはどこ吹く風だった……
自分の犯した言動、それは…全部自分で背負わなければならない。
背負わずにいること、他へ擦り付け逃げる、それらを続けることこそが…『大罪』なんだ」