第59章 承継人
「承継」とは「前の代からのものとして精神、身分、仕事、事業を受け継ぐ」
「継承」には「前の代のものとして財産、権利といったものを受け継ぐ」という意味がある。
「承継」は「承ってから継ぐ」という言葉の順番から、「前任者が長年培ってきた理念や思いを理解し、自分の中で承認してから受け継ぐ」
一方「継承」は、「前任者があるものに対して得た資格や経済的価値など具体的なものを受け継ぐ」というイメージがある。
継承は文化などを受け継ぐことを含む広い意味でも使用されている。
だからこそ…僕は彼女の姿勢を見て、継承ではなく承継が妥当だと考えている。
何より彼女、ケイトは…
前任者達の想い、精神、理念、それらの全てを理解している。
そしてその上で粛々と、前を見据えて突き進んでいる。
自らのすべきことを果たす為に――
ケイト「力にはなるべく頼らない。
寄り添って生きていきたい。
(前任者の)皆が、そうしてきたように…
生みの母『いい?この力はね――』微笑
皆を護る為のものだ。
自分の都合で、好き勝手に使っていいものじゃない。
そんな安いものでもない。
自分の人生をよりよくする為の免罪符じゃないんだよ、この力は…
私は…守られてきた。
言葉に、愛情に…優しさに……
生みの母の、たとえ自分の生みの父のせいで歪んだそれだとしても…今生きている。
もう…護られるだけじゃない。
今度は、こちらが護る番だ」
真剣な表情で前を見据えるそれに…
ああ、やっと吹っ切れたか…
という安堵と共に
不意に涙が滲む程の喜び、嬉しさが胸の内から込み上げてきた。
天界に居る神から啓示を聞いたらしい。
神『自分で決めたんでしょう?
進むと、選んで…
ちゃんと――見ているから』
ケイト「助けは来なかった…
皆は笑っていた。
自分へ痛みを、辛苦を与え続ける最中で…ずっと……(俯く)
それでも、時は進む。決して止まることは無い。
皆が皆…ただ、在りたいように在っているだけだってわかった。
前に進まないといけない。
自分は…自分にしかなれない。
いくら合わせようと限界があるし、合わないものだって無数にある。
その上で見据え、護るべきものを見定め、言動へ移す。
そう決めた」真剣
雄弁に、僕へ語った。