第58章 堕天
ケイト「……」
フィン「君の普通は…
一般常識となる普通とは、あまりに違い過ぎた。
だからかもしれないが…
君の周りに、聞こうとも、助けようともしない人達しかいなかったからこそかもしれないが……
今、君の周りにいる人達は違う…それは、わかるね?」
ケイト「…うん(こっくり)
それは…よく、わかるよ」
フィン「…ならいいんだ…
それだけ…わかってくれたならいい。
その…周りにいる僕達が、君の不幸を喜ぶと思うかい?」
ケイト「首を横に振る)ううん。それはない」
フィン「ほっ)…
…だろう?」微笑
ケイト「……うん…」
『………………』
沈黙が辺りを包む中、僕は再びケイトを抱き締めた。
フィン「ケイト…君は穢されていない。
少なくとも、魂までは穢されていない。言動も、その全てもが…
それがきっかけで、思考に蓋はしたかもしれない。
感情も心も、蓋をして殺し続けてきたかもしれない。
それでも…耳を貸さないという選択肢を取らず、真剣に向かい合ってくれた……
だからこそ…僕は……君と共に生きたいと願った。
何があろうと、信じた道を真っ直ぐに突き進む君が…好きだから…惚れたから…」
ケイト「………私も…」
フィン「ん?」双眸を覗き込む
ケイト「フィンみたいな…まともな人、初めて知った。
育ての家族以外で、見たことなんてなかった。
故意じゃなかったとしても…
傷付けて、殺して…されたら嫌なことされ続けるの、こんなにないのは初めてだったから……
させないって言ってくれたことも、本心からだって伝わってきたから…余計に、嬉しかったんだ…
感情を吐き出していいんだって…ちゃんと、出していいんだって…もう、蓋をしないでいいんだって…(涙目)
フラッシュバックしたら…きっと、また…蓋をすると思う…
男性に、ひどく恐怖すると思う。人間なんてっ!ってなると思う…
それでも……」顔を上げてフィンの双眸を見つめ返す
フィン「!」瞠目
ケイト「…それでも――また……引き戻してくれる?」ぐすっ
涙を浮かべながら…一筋零しながら、ケイトは縋るような眼で…震えた声で…震えた手で僕の服の裾を握り締め、尋ねた。
フィン「何を言ってる――?」
ケイト「!!」ビクッ!!!
その声に、言葉に…怯えたような眼で狼狽した。