第58章 堕天
ケイト「!!」瞠目
フィン「君の父がしたことは…子供と同じ行為だ。
押さえ切れない感情のままに暴れて、理想通りにならないと駄々をこねて、目先についた対象へため込んでいた怒りをぶつけて、屁理屈をこねてでも理想通りになれと強要する。
元来なら…思い通りにいかない現実を前に、何かしら折り合いを付けて子供から大人へと成長する。
その過程を支えなければいけない、見本として見せなければいけない立場にいる親がしていいことじゃない。
親なら…子に、それを乗り越える為の手助けをしてやらなくちゃいけない。
ただでさえ言葉にするのが下手で、自分の気持ちを言葉にすることもまだまだ苦手だろうからね。
たとえ折り合いのつかないことが起ころうとも…
それは生きていく上では…現実では欠かせないものだ。
決して無くならないし、変わりもしない。
自分の思い通りに動くわけでもないし、無かったことにもならない。
親が子に理想を押し付けるのも、それは子供の意思を殺すようなものだ。
逆に言うと、親が駄々をこねて押し付けてるのと同意義だ。
自分で考えて、行動して…失敗にしろ成功にしろ、そちらの方が本人にとって一番学びになる。
必要な情報だけ教えて、あとは自分で考えさせる方がいい。
子という個性を無くさない為にもね…」
ケイト「うんうん…そうだね。
大事に育てていきたいね…2人で(微笑)
私とは違って、ちゃんと……」
フィン「済まない。途中から話がずれたね…
何が言いたいかと言うと……
僕は、君の生みの父のようなことは絶対にしない(真剣)
僕が結婚したのは…決して…所有物にしたいからじゃない。
自分の思い通りに動く人形にする為じゃない。
感情も心も、理想も…一方的に押し付ければ、押し付けられた側は壊れてしまう。
そんなことをする為に、結婚したんじゃない。
君を追い詰める為に、思い通りに動かす為に結婚したわけじゃない」
ケイト「うん…知ってるよ」微笑&涙目
その涙が嬉し涙だというのは…収まった震えから、すぐわかった。
頬を撫でる僕の右手の甲を、左手で撫でながら…涙が一筋落ちていった。
それに…僕の想いを、そのままに――正直に伝えた