第58章 堕天
ケイト「本当に…憎まないといけないのは――
人を傷付け、殺し、奪ってもなお――何も思わない『心』だ
その概念が――それを増長し続けていく
その闇があったからこそ…私は、私たり得た」
真剣な表情で語ったその時…
浮かんでいた神紋の白い光に、黒い闇が混ざる……
光も、闇も、一つに――
透明な、一つという存在に。
まるで密閉された空間で炎と氷が混ざり合い、水蒸気爆発を起こすような…
相容れない2つがありのままで異なる唯一となる神々しい現象を前に…押し黙ったまま見守った。
ケイト「傷付ける行為に正当性なんてない。
あっていいはずがないんだ。
人を傷付けるのも、痛め付けるのも…殺すのも……
(赤子から育てた妹のシルキーを胸に抱き、慟哭をあげる己の姿と感情が蘇り、フラッシュバックを起こす)
胸に穴が開く、胸が張り裂けられる、全身が細切れにされる…そんな想いをさせるのも」
フラッシュバックを起こしながらも、心には波風立たず…静かに前を見据えていた。
違った形の絶望なのだと、理解した上で――
ケイト「生きている人を不幸にするのは簡単だ。
暴れればいい。
暴れて、殺して、奪って、踏みつけて…全てを殺し尽くせばいい……
それで…満足できるような痛みじゃないだろ?
でも…幸せにしたいと思える人に出会えた。
今度こそ――喪いたくはない
いない世界に未練なんて何もないと思っていた。
希望も無いまま、絶望しかないままだった……
いない世界なんて――全部、壊してやろうとさえ思うほどに…大切だった。
けれど…また――ようやく会えた
やっと、できたんだ。
それを傷付けると言うなら…お前は、私の敵だ。
傷付けるなら…傷付けられる覚悟ぐらい備えていろ。
傷付けなくても…傷付けられると構えていろ。
そういう世の中だ――私達が生きているのは…
如何様にでも残酷になる世界(地獄)だ――」
闇『ぞくっ!)』青ざめ
ケイト「人という存在全てを憎むのだとしたら…それは、お前をも滅ぼす。
もう――わかっているだろ?
お前がそういう暴力へ走った行為…
それそのものが、人にされたそれと全く同じものだってことに。
お前自身も滅ぼさなくてはならないものになる。
だから――そっちへ行ったらおしまいなんだよ!」