第58章 堕天
何故――自分ばかりが
今もなおケイトの胸中で叫び続け荒れ狂う闇…
僅か一滴で器から溢れ零れるそれは止めどなく、全てを吐き出すまで止まる由もない。
だが…彼女の中に、まだ確かにいる。
僕も誰も傷付けまいとした確固たる意志、魂が…
先程の吹き飛ばしでもただ飛ばされただけ、1人も傷付かず殺された者すら一人もいない。
いつでもその気になれば殺せるというのに…
それをしなかったのは――君という魂、頑なな意志だ
フィン「待っているよ…君の帰りを」微笑
ケイト「……」
信じられないものを見るような眼で、皆を見る中…
ティオナが笑って手を振り、それをティオネが諫めていた。
そして…待っているとばかりに、静かにケイトの双眸を愛しい者へ向ける眼差しで見つめていた。
フィン「無論、僕もね…」なで←頭を撫でる
ケイト「…(ずずっ!!)←闇を内へ押し込める
ああ(微笑)
ありがとう^^//」涙
闇を押し込めることに辛うじて成功したように見えた。
そして笑みを浮かべる彼女に、おかえりを言おうとした矢先…
闇『ふざけるな!』
ずくんっ!!!
ケイト「っ」
ずあっ!!
ケイトから、ケイトのものではない闇が離れた。
その瞬間を見計らい、異空間内に張っていた結界の範囲を即座にその闇のみとして閉じ込めた。
微動だにできないよう球状に押し込めて。
フィン「随分と手古摺らせてくれたね」
黒い笑みを浮かべながら人心地付いた。
闇『離せ!!
ちっ!
おい、お前!←ケイトを見やる
お前にはわかるだろう!!?
一つとなった時、私の想いが雪崩れ込んできたはずだ!!
憎しみが無いわけではないだろう!!!?』
次の瞬間…ありありとしたイメージが伝わってきた。
姉、母、育ての父母と初めての妹…
それらが奪われ、絹を裂くような悲痛な叫び声…涙と共に慟哭をあげる姿が……
まるで――自分が味わった景色のように、フラッシュバックとして
ケイト「あるさ…
在り過ぎて…あまりにも多過ぎて…
全てが…殺したい対象でしかなかった。
消してやりたい、と――それ以外思うことなんてなかった。
それでも……
憎むべき対象は…そこ(人、世界)じゃないだろ?」
静かに…心は荒波も立たず、淡々と言い放った。