第58章 堕天
突き刺されるはずだった一瞬前――
あの闇の強大な一撃を前に近付ける者も無く、ティオネの悲痛な叫び声を感じた。
ティオネ「団長おおおおおおおお!!!」
闇の激流に掻き消された叫び…
しかし…目の前の結果に、周囲にいた皆は再び動かずにいることに徹していた。
何の害も無い、ただの闇を…感情をぶちまける子供だと――
ぶちまけなければ、己を保てない程に追い詰められた…爆発的な感情だけなのだと……
赤子のように泣き叫ぶケイトを目の当たりにし、僕が宥めるのを静かに見守ってくれていた。
ケイト「!!」瞠目
フィン「君が…僕へ望まないのと同じように……
僕も…君へ望んではいない…
どうすれば…君は、落ち着いてくれる?」
未だ右手に持った脇差で剣先を突き立てられたまま
抱き締める力を強め、そっと背と後ろ頭をいつものように撫でた。
その時、空いていた左手で額に手を当てながら彼女は呟いた…
ケイト「………もう…遅い…」ぽつり
フィン「?何がだい?」
ケイト「もう…無理だ……
押さえ切れない!;
こんな自分ごと…殺すしかっ!!!」涙目&きっ!!
ガシッ!!!
そう自身の胸へ目を向け、闇を纏った左手で突こうとする。
それをさせるはずもなく右手で左手首を掴んで止め、真剣な表情のまま彼女へ言った。
フィン「僕が力尽くで止める」
ケイト「暴走すれば!!」俯
フィン「すればいい!!」
ケイト「!!」瞠目←フィンの双眸を見る
フィン「言ったはずだ――
感情も、力も、その全てを受け止める、と(真剣)←2192ページ参照
僕が受け止められないほど、弱い存在だと思うかい?」苦笑
ケイト「それは…
でも…私が、傷付けたら
フィン「如才ない君が、それ程に心乱すのはそうないだろう?
一人で全て抱え込まないでくれ」
ケイト「!」
フィン「その時は――僕が必ず止める」
ケイト「…っ」ぽとっ
瞳が揺れ、双眸から涙がぽろぽろと零れ落ちた。
フィン「その時の為に、僕が隣にいる(真剣)
それに…僕だけじゃないだろう?」←市壁の上を見やる
ケイト「?…←同じ方を見やる
!!」
フィン「君に『も』、駆け付けてくれる家族がいるのだから」微笑
そこには重婚者は勿論、説明する為にアイズ達も佇んで見守ってくれていた。