第57章 追憶
フィン「…まあ、君に問題があった場合、僕はきちんと言う。
その旨も、理由も、何に繋がるのかも…
だが…彼等の周りはそうじゃない。
問題の中でも、自身で気付けるものから指摘が無ければ気付けないものもある。
だからこそ…問題があることに気付けていない。
君が言ったことも込みでね…
それもまた、一つの問題だ」
ケイト「なるほど。
問題を問題と捉えられていない点だね」
フィン「強いて言うなら…
自らの理想が叶うとして…
現実で叶うものは、精々50%以下だと考えた方がいい。
いや、実際はもっと下かもしれない…
だが、それ以上に得られるものがあった。
君が生きていてくれること。
死に掛けた経験を得たからこそ、想いに気付けた。
それまでの人生を思い返し、君という存在の重さを理解することが出来た。
どれほど光になっていてくれたのかも、含めて……
だからこそ、言える…
あんな理想ばかりのぬるま湯につかり続けていたら、駄目になる。
それ以上のことが起こった場合、守らなければいけないのは、動かなければいけないのは己自身だ。
常に浸かり、怠け、甘やかされ続けた結果…出来上がるのは、自分一人では何も出来ない人間だ。
自分のことは何もしなくていい。君の何もかもを容認するよ。
そんな浅はかな言動で、人の成長を妨げる結果となる。
一人で生きられない人間になれば…1人残された時、生きられなくなってしまう。
僕は…君に、もっと成長して欲しい。
無限の可能性を秘めているのだからね…誰もが。
だからこそ、その芽を摘み取るわけにはいかないし、させるつもりもない。
甘やかすことは…確かに必要だ。
だが、限度を過ぎれば――殺しと同じだ。
甘やかされて当然という人間に育てる気もないし、させるつもりもない。
だからこそ…ああいう浅慮な人間が生まれ、それを容認する周囲によってあの気持ち悪い世界が出来上がったんだろう?
相容れないのが悪か?と問われればそうでもない。
違う正義があるだけ、違う価値観があるだけ、譲れない個が違うだけだ。
だからこそ…理解する為に言葉を交わす、受け取り方が異なれば訂正もできる。
時間はかかるだろうが…人が成長し、学ぶ上において必要不可避の工程だ」
ケイト「うん…経験し、学び、糧として成長に導く」