第57章 追憶
フィン「…その気持ちはよくわかるよ。
実際の所、思い通りに行かなかったことが無いような物言いだったからね。
拳を交わせば、力を交わしさえすれば、時間さえ過ぎれば…いくらでも力を貸してもらえる。
その慣習が根付いているのか…共通の敵が現れれば協力してもらえ、力を貸してもらえて当然のような物言いをされたね。
それも何故か…終末神に対抗する力が、自身にあるかのように――
実際の所を言うと、それを倒せるだけの力はケイトと僕しか持ってはいなかった。
相対してもなおそれも理解しようともせず…自身が自分がと、己のことばかり。
理解する為の言葉を交わすという行為は、自身より強い相手にしか行ってはいなかった。
というのが実情なのだけれど…腑に落ちないこともある」
ケイト「ん?」
フィン「…君が嫌いだと思うのは、彼の中途半端かつ優柔不断な点だろう。
そして、それを甘んじて受け入れ続ける周囲も、不思議と都合が悪いことは決して行動に移さない敵。
その気になれば殺せるというのに一切殺さず、都合のいいように回り続ける世界…
それらが嫌悪する点だというのもよくわかる。
だが…1番の問題点の指摘を忘れている」
ケイト「へ?(ぱちくり)
他に何があったの?;」
フィン「…自分とは違う存在として、違った視野を抱く者として、一切の言動が無い。
彼を承服し続け、承認し続け、認め続け、受け入れ続け、容認し続ける。
違う個としての在り方、相互理解、思い通りに行かないこともあるということ。
全てが最終的には思い通りに進んでいっている。
もし仮に思い通りに行かない点が発生しようとも、それは極僅かでしかない。
君の言わんとすることも、嫌悪の対象となる理由も、その気持ちもわかるけれど…
1番の問題は――成長するに当たって、それ以上先が見込めないことだ」真剣
ケイト「……なるほど…
学びとは、他との違いから得られるもの。
違うからこそ学びがあるわけだからね」真剣&顎に手を当て
ふむふむと二度頷くケイトを見やり…少し、感慨にふけっていた。
己のことなど理解する対象に無かった。
己を守ることもなく、人ばかり大事にしようとした。
だがそれは…大事にしてくれる存在を求めていたのもある。
それが…そう言える程に成長してくれたことが喜ばしかった。