第57章 追憶
そして…精霊神の親は精霊寵愛をもって助けようとし、足りない分の血は精霊王が自ら分かち与えた。
そうして彼は目覚めた……
晩年、クリエイトという魔法…
自らの内に秘めていた「神の力」を呼び覚ました状態で――
しかし…――彼は一切、人へ求めなかった。
どうしても必要な時以外、求めることもしようともしなかった。
わかっていたのだろう…それまでの人生で。
いくら求めたとしても、それに終わりはないのだということを……
話せば話すほど、理解すればするほど…彼と同じ部分がかなり多く感じた。
半身とする気など…ましてや人間相手にする気など、微塵としてなかった。
だが…精霊神の行為に感化されたのもあり、無駄にさせたくはないという想いの下でやった。
その行為が間違っていなかったと…彼を見て、強く思うようになった。
真剣で、熱く、気高く、聡明で…高らかに抱いた理想をぶつける。
そして違った形の理想を抱く者は、そういうものだと割り切り、未知のものとして理解しようと耳を傾け、真摯に向き合える。
王に持ち上げられた理由も、よくわかった――
だが、それ以上に不思議なのは…
気を許した相手とのギャップだ…
気を許した相手にはよく笑い、泣き、怒り…
感情をそのままに出して、もし出されても笑って受け容れる。
そういう人間だった……
利用などできない。顔にすぐ出る。駆け引きなどもってのほか。
ましてや裏表も無く、隠し事も下手ときた。
ケイトもまた…気を許した相手にはとことん隠し事が下手なようだ。
記憶を無くしていなければ、隠すことさえままならなかった。
精霊王「……本当によいのか?」
「ああ」頷
精霊王「…後悔は、しないか――
ヘレイオス」
ヘレイオス「しない!」
そう快活に笑う彼に、力が目覚めた理由を素直に打ち明けた。
急を要していたとはいえ、無断で血の契約を交わしたこと…
そのせいで…人外と言える存在となってしまったこと。
しかし、彼は逆に感謝した。
助けてくれたんだな、ありがとう――と。
一言毎にしきりに頷き、最後に満面の笑みを浮かべて頭を下げられた。
その時に、胸の内に灯ったのは…初めての感覚だった。
この者になら、と――希望を抱いた
それまでの絶望ではなく、初めて――